2011年6月22日

悩み多き者よ

私は16歳の頃から歌を書き始め
60年代から70年代へと移り行く大きな時代のうねりの中で
己の道を見失い、やがて挫折を味わう22歳まで東京で歌っていた。

ベトナム戦争を筆頭に、侵略と衝突を繰り返した60年代は世紀末とも呼ばれ
音楽やアートの世界も多くの退廃的な作品に支配されていた中で
実験的な試みが幾つも生まれ、それが70年代の文化を形成して行った。
私にとっては、その時代が音楽(Rock)に於ける維新でもあり、
目まぐるしいほどの変化に明け暮れるその真っ只中で生きる者としては
相当な覚悟と才能が無ければ、歌い続けて行くことなど出来なかったのだ。
歌いたい言葉を捨てて、レコード会社の言うがままに
耳当たりの良い言葉を羅列する陳腐な歌を唄う道も用意されてはいたけれど
その誘いには乗らず、結局歌うことをやめてしまった。

あれから37年、今また歌っていられるのは
私が生きた70年代に完成された物たちが、今なお根付いているからだろう。
私の体の中には、70年代そのものが宿っており
私はそれを表出してるに過ぎないのだから。

それでも時に迷いは生じる。
今がちょうどその時だ。


今夜は斉藤哲夫の名曲「悩み多き者よ」が沁みる。




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