2016年3月11日

あれこれ



五年前、僕はダイハツのテリオスキッドに乗っていて
鶴ヶ峰に在る代理店、岩崎自動車へ車検をお願いした。
二泊三日の工程なので代車を借り、その車を預けたのが10日の午後。
翌日はライブを予定していた。

11日の午後、ライブに備えて自宅でリハーサル中に
経験したことも無いほどの長い横揺れに襲われる。
十勝沖地震を筆頭に、何度かの大きな揺れを体験してきた僕にとっても
あの日の揺れ方は尋常ではなかった。
棚にセットしてあったモニタースピーカーが目の前に転げ落ち
僕はベッドに避難したまま呆然と家が軋む音を聞いていたのだ。

しばらくしてテレビに映し出された三陸の光景は
ハリウッド映画のワンシーンじゃないかと思えてしまうほど
精巧に作られたCGかミニチュアのように見え
現実として受け入れるまでにかなり時間が掛かったことを覚えている。

電車も止まり、車も無いのでライブは中止にしてもらった。
仮に車で行ったとしても、渋滞で身動きが取れなかったことだろう。
いや、それ以前に僕が歌える状態ではなかった。
正直ビビッていたのだ。

報道という名の下に
リアルタイムで茶の間に送られて来るメディアの映像が
途轍もなく恐ろしいものに感じられたのもこのときだった。
当たり前の日常が、静かな山村の営みが
目の前で破壊されて行く光景ほど怖いことがこの世にあるだろうか。
冷静でいられるわけが無い。

翌日、自動車屋へ電話してみると
(予想に反して)整備は滞りなく終わっていた。
車を引き取り、家までの道を走る黄昏時の
ふだんと変わらぬ街の風景が印象に残っている。
静かだ。

けれどその翌日、街は豹変していた。
仕事場へ向うため車を走らせると
近くのガソリンスタンドに長蛇の列が出来ていたのだ。
道路に沿って300メートルほど、いやもっとか?
見通しの良い道なのに最後尾が見えやしないほどの車の列。
首都圏のコンビナートの火災の影響から
ガソリンが不足するという噂が一気に広まった結果である。
深刻な被害を被った避難民など居る筈もない横浜で、だ。
しかもそこに並んでいるのは殆どが一般家庭の乗用車。
見るからに乗る機会も少なそうな車と運転者ばかりだった。

それは鶴見の仕事場までの間の、どのスタンドでも同じ光景で
信号(交差点)を幾つも挟んで延々と車列が続いていたのだ。
その内の何台かはガス欠が切迫している運送業の車だったが、
他はどれも乗用車ばかりで、低燃費のハイブリッド車も沢山並んでいた。
まるでハイエナじゃないか!僕は吐き気に襲われた。
物が不足したり、物流が滞ったりした時の
必要ないほどの買い溜め買占めは、たぶんこの先も変わらないだろう。

あれから五年、わずか五年。
ビビッたチキンではあっても、僕の怒りは消えてない。

*

2016年3月6日

なんちゃって親父の処世術



現在の我が家、
同居人はカミさんと(独身を貫き中の)長女と、そして猫。
僕以外は全て女性なのでありまして
その真っ只中で暮らす唯一の男にとっては
まさに毎日が気遣いの連続なのであります。

が、そんな暮らしにも慣れてしまったのか
息苦しいとか窮屈な思いとか
今じゃまったく感じなくなりました。
孤軍奮闘している自覚はあるのですが
波風立てぬよう(上手に)振舞っているんでしょうね。
これもまた生活の一部、僕の日常ですもの。

女性に対する気遣いで一番大切なことは
異性間の価値観や習慣の違いを認めることです。
バスルームやトイレ、洗面台の使い方など
特に水回りに関しては、彼女たちの感覚を優先しなければなりません。

余計な口出しはせず、はいはいと黙って聞き流し
あからさまに戦いを好まぬ姿勢を見せつけなければ
とても大変な事態になってしまうわけですよ。

昭和の親父なのに情けない!
そう揶揄されるのは承知の上で敢えて言います。
身近な女性を敵に回すことほど厄介なものはありません。

ゆえに、気遣いは欠かせないのです。
むろん、猫に対しても
飲み水は減ってないか、ご飯は足りてるか
日に何度もチェックしている次第です。

けれど決して肩身が狭く感じることは無いのでして
うまい具合にちゃんと自分の居場所を確保しながら
案外と自由に好き勝手やって行けてるのです。
たぶんこれが、長く生きて身に着けた処世術ってやつなんでしょうけど
家の外だけじゃなく、家族に対しても必要なことだと思いますよ。

そんな、なんちゃって親父。
今日はカミさんの誕生日なので、ケーキとワインを買って来ました。
赤面してしまうような愛なんかじゃありませんよ、
気遣いです。ちょっとした心遣いです。
家族にとって、これが一番大切なことなんです。
心はハッピーじゃなきゃだめ!!


とは言いながら
家族(愛人?)同然の相棒を半年近く放ったらかしにしてました。
風呂場で背中を流してあげるかの如く
綺麗に磨き上げ、弦を張り替えてあげましたけど
うんでもなきゃすんでもなく、愛想の無いJ子です。

なんちゃって親父の、なんちゃってミュージッシャンでありますから
これもまた仕方のないことかと・・

*

2016年3月2日

絶縁状



iPhone4から始まった僕のSoftBankとのお付き合い。
かれこれ5年以上となりましたけど
近頃はこのキャリアに対する不信感が募っています。

昨年はADSLが突然の接続不良となり
モデム交換やらNTT局舎内の調整やらをして頂いたものの
全く改善されないという不可解さから
50Mbps、月額¥1980(電話付き)のお得なプランをやむなく解約。
代わりに工事不要のSoftBank Airを導入したのでありました。

無線ですから、夜間帯にスピードが遅くなるのは承知の上でしたが
予想外にも、時間帯によっては下り30~50Mbpsくらい出ていたものです。
電波強度だってインジケーターフル点燈、ちょっと驚いてしまいました。
こりゃあいいじゃないか!!

ところが・・

半年ほど経った現在はというと
スピードは極端に低下して5~8Mbps、もはやADSL並みです。
おまけにバリバリだった電波強度が当時の半分以下。
ご覧の通り、イエローカードの際まで低下しています。

何事にも寛容なアタシ、
滅多なことでは文句なんて言いません。受け入れます。
けどね、この詐欺みたいな仕打ちには

怒ってます!!



光回線にしますよ、潔く。
そして胡散臭さが増大してるSoftBankともおさらば。
4インチのiPhone SEが発売されたら
MNPでauに衣替えしてネットもauひかりにしようと思ってます。
ASAHIネットならホームタイプでも電話が付いて月額¥2300ですからね。

孫さん、
そんなわけでさようなら。

*

2016年3月1日

人間のソース


北海道の僕の実家辺りでは、強烈な低気圧が猛威を奮い
この時期としては珍しいほどの大雪に見舞われたとか。
おまけに吹雪きともなると、雪掻きをする気力すら失ってしまうことだろう。
心配になって、おふくろに電話してみた。
もうじき七十に届きそうな姉が何度も雪掻きに精を出しているそうな。
北国の高齢者は、容赦ない自然との闘いなのである。
半端な気持ちじゃ決して生きて行けない過酷さと対峙するなんて
ああ・・今となっては、僕は絶対に其処には住めないなと思ってしまう。
如何に今夜の横浜が冷えると言っても
氷点下でもなければ、吹き付ける風雪だってありゃしない。
心閉ざしてしまうほどの極寒ではないことを、幸せに感じなければいけないよね。

もう一人、旧い友人のことも気にかかり
父親の介護で4年前から其処で暮らしている知魅さんにも電話してみた。
母親を看取った後、たった一人で親父さんの世話をしている彼。
もううんざりだと、何度も口にしながらも奮闘している様子を聞く度に
重い荷を背負いながら、己に課した宿題を全うしようとしている彼が
何とも素敵に思えて仕方ない。僕には、たぶん出来ない。

吹雪いてるでしょ、雪掻き大変でしょ。そう問い掛けると
笑いながら(おそらく諦めの境地からの口調)
「酒飲んで外を眺めてる」・・そうな。
僕ら、そこじゃ暮らせないよね。共通の言葉だったけれど
早く東京に帰りたいと、今日も電話の向こうで切実な声で言っていた。
親の介護に明け暮れる毎日は、僕の想像を絶することだ。
老々介護という言葉が重く圧し掛かって来る僕らの世代、
非現実的な現実という物事ほど惨いものはない。
ましてやそれが日常の殆どを埋め尽くしてしまうなんて
能天気な僕は、今の彼には頭が上がらない。


呑気さゆえに、
釜揚げうどんが半額になる日であることを思い出し
カミさんを連れて丸亀製麺へやって来た。
僕の休日と重なったのは今年初めてのこと、
およそ半年ぶりくらいにその恩恵を授かったのである。

娘の家にもテイクアウトの天ぷらを買い求め、
もしやと思い自家製だしソースも売り物なのか尋ねてみると
残念ながらボトルでの店頭販売はしてないそうな。
これ、実に旨いソースなんだよねえ。


けれど、欲しい分だけ30円で持ち帰れるんだと。
湯飲み茶碗ほどの大きさの蓋付きカップを差し出され
「好きなだけ入れていいですよ~」と、笑顔で言われたもんだから
いっぱいになるまで並々と注いで持ち帰りましたわ(笑)
丸亀さん、太っ腹!また行くからねっ!!


そして僕はと云えば
お雛様と双子の記念写真にちゃっかり割り込み
のほほ~んと笑っているのでありました。

怒りや憎しみ、敵対心。ましてや絶望なんて
光の無い闇からは何も見出すことが出来ません。
人を愛し己を愛す、人間のソースはそれが肝心なのだと
僕はいつも思うんです。

なんたって、O型てんびん座ですもん。

*