見上げた先に
いつも空がある。
嬉しいときは
ただひたすらに清々しく
悲しいときは
澄んだ蒼さを恨んだりしながらも
人はみな
空に己の心を映し出している。
晴れれば良いというものではない。
雨だからと悔やむこともない。
その瞬間に見た空の色と雲の形が
まるでひとつの出来事を演出するかのように
鮮烈に僕らの記憶の一部となるのだから。
けれど
夕暮れの街に佇み
ビルとビルの隙間から垣間見る空だけは
なぜかいつも刹那くなるものだ。
この日の空も。
・・あの日、暮れて行く街を見つめていた僕は
理由もなく、事の顛末を予感していたのかも知れない。
頭の中が空っぽにはなったけれど、ボロボロにはならずに済んだのも
どこかで身構えて対峙していたからなんだろう。
あれから一年。
何かが変わったようで、実は何も変わっちゃいない。
それが人間という生き物の煩わしさなのだ。
明け方近くに、ちょっとだけいい夢を見た。
その続きが見たくって、何度も浅い眠りに堕ちたのだが
こんがらがった糸のように
道は迷路の如く幾つにも分かれ
何処をどう辿っても、その場所すら見つからなかった。
青く澄んだ空の色だけが、はっきりと記憶にあるだけで。
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