2013年2月22日

「と」


「息が合う」という表現があります。
お互いの呼吸が同期して、その心地好さからやがて親しい仲に発展したりする。
人と人とが結び付く過程で、それはとても大切な感覚であり
時には言葉以上の説得力を持つことだってあるのです。

その内面から発せられる息と言葉(音声)は親密な関係にあります。
どんなに優しい言葉を使っていても、その息が冷たければ愛情は伝わりませんし
逆に激しく厳しい言い方をされたとしても、
温かな息が感じられれば人は受け入れることが出来るんだと思います。

普通に会話する中で、感情や言葉に応じて当然息は変化します。
私たち人間にはそれを読み取る能力がありますから
相手が敵か味方か、信頼に値するか否かを判断する材料になるのです。
たぶんそれは動物の本能なんでしょうね。

ところが最近は、コミュニケーションの基となるその「息」が、とても乱れてきています。
息を殺して話す人も居れば、言葉の代わりに息ばかり吐き出す人まで居て
何やら病的に思えてしまうだけで「会話」が成り立たないのです。

コールセンターという、言葉の掃き溜めみたいな場所に従事して、
毎日大勢のお客様の電話に応対するのが私の仕事ですが、
ここ数年急激に増えて来たのが前述のような「息を感じさせない」人からの電話です。
篭った声で聞き取れないほど発音も悪く、言葉に「間」が無いので会話になりません。
この人、呼吸してるのかしら?と思ってしまうほど一本調子で一気に喋ろうとしますから
ブレス(息継ぎ)のポイントが滅茶苦茶になり、こちらとの息が合わなくなるのです。
仕方なく、ある程度喋り終わるまで黙って待つことにすると「聞いてるの!?」と言われたり
いやはや、そんなに会話がお嫌いなら電話など掛けて来なきゃいいのにと思ってしまいます。

電話番号はハイフンで局番などが区切られてますよね?
相手が聞き取りやすいように、そこで切りながら読み上げるのが普通だと思ってますが
携帯番号の11桁を早口で一気に言う人が近頃は多いんです。
それどころか住所まで、ノン・ブレスで頭から尻まで言いきっちゃう人も沢山居ます。
共通してるのは早口であること。
途中で息継ぎをしない(出来ない?)ので、一気に言うしかないのかも知れません。

綺麗な日本語を操るにはまず「息」から。
言葉を伝えるためには「間」も必要なのが、単調な発音である日本語の宿命です。
呼吸しましょうよ、呼吸!



画像はNHK連続TV小説「純と愛」のテーマとも言える、人と人の『と』

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