2013年3月11日

午後2時46分

いつもと変わらぬ午後、
昨日と同じ空の色。

私はというと、
薄灰色になった車の砂埃を払い
フロントガラスを拭いて
灰皿に溜まった吸殻を捨てる。
今日は娘の家に野菜を届ける日だ。

普段着のままの女房を助手席に乗せ、
無言のまま車を走らせる。
16号バイパスを降りた辺りで
掛けていたFMから鐘の音が流れ始めた。
1分間、鐘の音だけが鳴っている。
ふと私は「マザー」を歌い出したくなった。

午後2時46分。

いつもと変わらぬ午後、
昨日と同じ空の下を
私は無言のままで走り抜けて行った。

街が、車が、人が、風が、
みんなやさしい顔で挨拶してくれてるように思えたことが
気のせいではないことを願いながら。


いずれこの子は、
自分が生まれた年の春に大きな災害があったことを知るだろう。
そして大きくなって、
自分が生まれて来たことの意味を考えてくれるだろう。

いつもと変わらぬ午後、
昨日と同じ空の色。

私の3月11日は
そうして過ぎて行く。

この平穏な日常に感謝しなければ
昨日を振り返ることも、明日を夢見ることも
何ひとつ出来やしないじゃないか。

そう思うんだ。

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