2014年7月25日

素晴らしき吟遊楽人



手術からおよそ二ヶ月、
開いたままの傷口は己の肉や細胞の自然治癒力により
長い時間を掛けてようやく完治したようだ。
梅雨が明け、暑い夏が訪れて
僕の松島詣でが終わりを迎えたことを
今日、医師の口から聞いた。

長い間お疲れさまでした、完治です。
傍らの看護士も、おめでとうございますと言い微笑む。
痛みや不快感、日常生活の不便さなど
敢えて言葉にするほどのことは無かったというのに
なんて晴れやかな気分にさせてくれるんだろう。

会計を済ませて外へ出ると
夏の太陽がジリジリと焼け付くほどの光を放つ。
こんな日に街を歩くのもいいもんだ、
自虐的にも思えるそんな熱射の路を歩きながら
僕は束の間の開放感に浸る。

日が傾き始めた頃、
駅の近くに在る立ち飲みの焼き鳥屋の暖簾を潜る。
他に客の居ない店で、その空間を独占できるのは最高の贅沢だ。
串三本とビールと焼酎、密かに己の全快を祝っていることなど
当たり前だが誰も知る由などない。
相撲中継を観ながら軽く飲み、ホープを1本吸って店を出る。
暑い一日だったけれど、少しはまともな風が吹き始めていた。

郵便受けを覗くと、アマゾンからゆうメールが届いていた。
スーマーのアルバム「MINSTREL」だ。
彼から直接送ってもらうことも出来たのだが
そこを敢えてショップで買うことを選択したのは
この男がメジャーな存在と成りつつあることを
僕自身が認めたかったからなのだ。
仲間内という狭い範疇では決して語れない素晴らしき吟遊楽人となった彼を
こんな形で僕は祝ってみたわけである。

嫉妬するほどの良いアルバムに仕上がっていたことは
もちろん、言うまでもない。

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