深夜、ブルーノートやプレステイジからリリースされた
いわゆるジャズの名盤という幾つかを聴くことがたまにあります。
酒を呑みながらなので、CDは手軽で気を遣うことがないので楽なんですが
ジャケットをアートとして捉えると、やはりコンパクトサイズでは物足りません。
30Cm角の中で完結されたそれを縮小すると、まるで別物に感じてしまうからです。
たとえば僕の愛聴盤であるこのアルバム、
ジョージ・ムラーツとローランド・ハナの「ポギー&ベス」
これなんかは完璧にジャケットを見ての衝動買いでした。
トリオ・レコードから76年に発売された(あまり評判にならなかった)物ですけど
写真もデザインも(もちろん演奏も)秀逸な一枚だと思っています。
これが仮にCDだったとするなら、視覚に訴えてくるものが希薄なので
たぶん手に取ることもなかったんじゃないでしょうか。
そもそもプラスチックケースというのが
指先から感じるイメージや直感を阻害しているような気がします。
紙の素材や質、インクの乗り具合なども内容を伝える重要なファクターなのですから
デザインと併せそれらが凝縮した30Cm角のアートは唯一無二の物と言えます。
絶滅寸前まで追い詰められ、再び脚光を浴びる形になったアナログ盤の醍醐味は
実はこんなところにもあるのですが、こうして外観だけで捉えるなら
文庫本と単行本の違いみたいなものでしょうかね。
そんなアナログ盤の音を楽しむため、暮れに旧いスピーカーを買ってしまいました。
僕には以前から根拠のない思い込みがありまして
30Cmのディスクを再生するには同サイズのターンテーブルと
そして30Cmのウーハーがマウントされたスピーカーが最低限必要なのだと。
今までに使用した中で一番理にかなっていたのはJBLの4311でしたが
大きな音で鳴らせない現在の住環境では宝の持ち腐れになってしまうので
妥協できるぎりぎりのところでビクターのSX-3という
70年代初頭に一世を風靡した国産モデルが安く売られていたので入手したわけです。
ウーハーは持論に反して25Cmですが、これはやむを得ない結果でしょう。
ただしこれ、僕はずっと反目していたモデルでして
名機と謳われ、とても評判の良かった物なんですが
当時の僕は尖った音が好みだったので、滑らかで綺麗な音には全く関心が無かったのです。
それが・・年齢のせいなんでしょうかねえ、
今じゃ受け入れられるどころか「いい音」に聴こえてしまいます(笑)
いや、ほんとこれはいいですよ。
ソフトドームのツイーターは刺激音も無くスーッと伸びていますし
2KHzでクロスするウーハーとの繋がりもとてもスムーズです。
当時の評判通り、音の響きがいいんですよね。
フロントバッフルがスプルース材だからなのか
密閉箱なのに天板を叩くと、スコーンと抜けの良い音が響くから不思議です。
アコースティック楽器の音は特筆ものですね。
ま、これがクラシック音楽を愛好する方々に認められた所以なんでしょうけど
若い頃の僕がどうしても受け入れられなかったのは、この「音の甘さ」なんです。
それがどうでしょ、今ある僕には心地好い。
けれど、たったひとつだけ誤算がありました。
アナログ盤より、むしろCDの方が艶やかに鳴るんです。
デジタルの音源が、極めてアナログっぽい音がするもんで
ここ数日はヤフオクで仕入れたLPはそっちのけでCDばかり掛けています。
これはある意味嬉しい誤算てやつですな。
40数年の時を経て、老兵が現代に蘇ったようなもんです。
ようやく働ける場を得たような、そんなところでしょうけど
マーチンはマーチンらしく、ギブソンはギブソンらしく
見事に鳴り分けてくれるんですよ、これが。
数日前、FBで呟いた言葉
「往年のフォークソングの響きだ」と書いてしまったのは
解説するとこういうことだったんです。
いやはや
侮るなかれ国産機、ですな。
呑みながら綴っていると
だんだん訳がわからなくなってきてしまいました。
他にも言いたいことがあったような気がしますけど
それはまたいずれ。
ジャック・エリオットが気持ち良さそうに歌っている夜でした。
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