2020年10月11日

今は亡き赤箱を偲ぶ

 

マ―チン・ブロンズライトM140、いわゆる赤箱と呼ばれていた頃のパッケ―ジ。外装は厚紙で作られた箱製で内袋も紙だった。市場の実勢価格が400円ほどで安価だったこともあり、古くから好んで愛用している者の他にも、取り合えずとか間に合わせといった類の需要もあり、ロ―コスト製品ながら長きに渡って多くのギタリストに貢献してきた歴史がある。かく言う私もご多分に漏れず重宝してきた一人であり、ダダリオや幾つかのコ―ティング弦をとっかえひっかえしながら、チョイスに困ったときは決まってこれにしていたほど、数あるアコギ弦の中でもスタンダ―ド的な位置にあったのだろうと思う。

私感ながら、ブロンズ弦はなんと言っても、ざらついた音のジャリジャリしたところがいい。それに加えて、張り替えた直後のギラギラ感、少し馴染んできた頃のツッパリ感、そして古くなってからのにゅるにゅる感といったように、音色を三度楽しめるところもブロンズ弦ならではなのだ。個人的にはライブを終えた後、数日間放置した頃合いの音が一番好きであり、その後数ケ月経過した頃のサスティ―ンが抜けた音もまんざら嫌いではない。要は、ストロ―クで弾くにはある程度の「雑味」があった方がいいのであって、それは私のみならずギブソンやマホガニ―のボディが好きな方には解って頂けるのではないだろうか。

それほど重宝されていた赤箱だが、数年前唐突に市場から姿を消し、後継と思しきMA140 AUTHENTICというポリ袋入りの(今風な)製品に変わってしまった。







商品レビュ―や評判は悪くなさそうだが(おそらく)ザラザラギラギラ感を後退させ、少しばかりの高級感を醸し出しているんじゃなかろうか。だとしたなら誰も買わない、むろん私も。せめてダダリオのEJ11やDARCOと同じくらいの価格であれば受け入れたのだが、実勢価格は赤箱の2倍、安売店でも800円は下らないという、ある意味プチブル的な階層に属してしまったのが中途半端すぎて気に入らない。・・ねえ、赤箱愛好家だった皆さんは今どうしてるの?

などと、思いもよらず(今は亡き)赤箱を褒め称えてしまったが、それというのも昨晩、友人からお薦めの弦を紹介してほしいと尋ねられたことから始まる。いきなりの直球質問、知恵や経験のキャパシティに乏しい私。答えに窮するそんなときのために赤箱が存在していたことを、改めて思い知らされたからである。


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