2022年10月31日

70年代の玩具箱(#4)

 


Apple music、広帯域で空間系の独特な音作りが施されてますから

再生機材がオーディオ製品ではなくても広がりのある音が楽しめます。

ただし、これもいわゆる「癖」の部類。

私のようにレンジの狭い旧い機材でアナログ感を楽しむ者にとっては

それが弊害となり逆効果になってしまうような音源が多々あるのです。

しかしながら私が聴きたいと思うミュージシャンやアルバムの殆どが

レアな物まで網羅されていて月額¥980というお得感が先立ちまして

多少のことには目をつぶりながら毎日活用させて頂いてます。


これを45年前のアンプ、OTTO DCA-301で再生してみました。

如何に高音質を謳うハイレゾ音源であっても

旧型アンプの再生帯域は現行モデルより遥かに狭いわけですから

音の面で恩恵にあずかることはないだろうと思いましたが

空間系の細めの音がアンプ側の音質と相まって

意外なほどバランス良く鳴ってくれました。

というより、出て来る音は完全にDCA-301が支配しています。

これは癖の強いアンプの本領発揮といったところでしょうか。

仮に以前利用していたAmazon musicだったとしたなら

おそらく中低域がダブついてしまっただろうと思います。

タイムリーにApple musicに替えたのが良い結果となったようです。

よし、合格!

前回、アナログ盤の再生で課題となったカートリッジ問題。

SHUREのMMカートリッジとフォノ・イコライザの相性が悪く

そこにアンプ固有の音質が重なりザラついてしまったものですから

長らく仕舞い込んだままだった旧いMCカートリッジに登場して頂きました。

1982年製DENON DL-103GOLD、40歳の老練です。

カンチレバーさえヘタってなければ十分活躍してくれるだろうと

まるで根拠のない思い込みと期待だけで事を進めることに。

ただし、DCA-301にはMCの増幅回路がありませんから

これまた倉庫の奥から旧い昇圧トランスを引っ張り出してきたのです。

1982年製SONY HA-T10、端子間に直結できる優れ物で

小ぶりですが正真正銘のステップアップトランスなんです。

けれど実は私、こちらを使うのは初めてでして

果たして問題なく作動してくれるのかが最大の心配事でした。

が!期せずして結成された40歳の老練コンビ、

結線を終えた時点でハムノイズは出てません。

これは行けるかも・・いざ、レコード盤スタート!


おお!ノイズも無く微弱なMCカートリッジ出力を増幅して

全く飽和することなくアンプへ信号を送り込んでくれてます。

インピーダンスのマッチングもいいのでDL-103との相性も抜群です。

やるじゃないかHA-T10クン!見直したぜ!


とは言っても、最大の問題点は40年を経過したDL-103の劣化状況。

喜んでばかりはいられません。

盤が回り始めて暫くは針先のトレース状態に神経を集中させました。

幸いなことに足腰は弱ってないようで完璧に音を拾っています。

心配していた歪みや嫌な音が出てないどころか

不安を吹き飛ばしてくれるように音溝をトレースしてくれてます。

なんじゃこの40歳コンビは!?すげえじゃないか!!

そしてそして、MCカートリッジに変えたことでザラ付きも無くなり

中高域の荒さや派手さを抑え込むことにも成功しました。

これなら楽器やジャンルに関わらずオールマイティに再生できそうです。

いやあ、やはりアナログは楽しい!奥が深くて達成感があります。

嬉しさのあまり、アルバム10枚ほど立て続けに掛けてしまいました。

(続く)



2022年10月30日

70年代の玩具箱(#3)

 


あらま。

浮かれていたせいか、Macを起動することをすっかり忘れてました。

Apple musicのチェックは後回しにしてCDとアナログ盤から始めることに。

近場にあったSOMETHIN' ELSEをダイヤトーンDS-251で再生してみると

わーお!音に厚みがあってデジタル臭さがありません。

中低域を持ち上げた音作りがされているようでアナログっぽい音場です。

パワー感もカタログデータ以上の張り出しを感じるほどで

まるで球のアンプで鳴らしているような錯覚に陥ります。

さすが白物家電メーカーの製品ですね、音に堅苦しさがありません。

フラットで癖のない特性を競い合うオーディオ専門メーカーであれば

こんな音作りは邪道だと決めつけて絶対にやらないでしょうけど

OTTOは家電メーカー(サンヨー)の地味なブランド製品であり

特性や回路技術を他社と張り合う必要性が無かったのでしょうから

モジュラーステレオの延長線として自由にやれたんだと思います。


でもね、アンプに限らず当時のオーディオ製品て

畑違いの会社から大傑作が生まれたりしたものなんですよ。

流行りだからウチでも作ってみるか、みたいなノリで

世に出してみると大ヒットしてバカ売れしたとか

白物家電メーカーの発想の自由さによる斬新な製品や

専門メーカーに負けじと開発された製品など、当時は多々ありました。

松下のテクニクスを筆頭に(技術力でいうと他社とは格が違いますけど)

東芝のオーレックスや日立のLo-D、少し遅れてテクノロジーのNECとか

家電各社のオーディオブランドが一斉に登場したのが70年代です。


話が少し逸れてしまったかもしれませんが

オーディオ製品に限らず、癖の強い物ほど楽しみが増すことがあります。

このアンプの分厚い音も、言ってみれば色濃く表れる「癖」であって

それが音を楽しませてくれる重要なファクターとなっているわけですから

無味無臭で上品な音の製品よりも劣るということは決してありません。

野暮でバタ臭いと言われるかもしれないこんな音、私は好きですね。

これはたぶんApple musicを再生した時にも同じように感じる筈です。

楽しみですね。


さて、フォノ・イコライザはどんな感じでしょう。

カートリッジのわずか3mmV前後の微弱信号を増幅する回路ですから

パーツの良し悪しが音質に大きく影響してきます。

ローコストに重点を置いて設計されるエントリーモデルにとって

こればかりは上位機種に敵いっこないのですが・・


聴き慣れたStuffのファーストアルバム、少々音が荒くなりました。

前述の通りフォノ・イコライザが非力なせいもありますけど

カートリッジがこのアンプと同じような音響特性を持つSHUREなので

相乗効果となって中低域が強調されすぎてしまったのでしょう。

ここはむしろフラットな特性のカートリッジに変えたいところです。

例えばDENONのMCカートリッジ、DL-103とかね。

如何に癖の強いものが好きだとは言っても

それは増幅系であるアンプや音に変換するスピーカーの話であって

元となる入口だけはフラットな特性の物をチョイスするのが

オーディオに関しては上手くバランスが取れるものなんです。


空間系の音作りが施されたApple musicではどうなりますかね。

(続く)



2022年10月29日

70年代の玩具箱(#2)

 


待ち遠しくて、到着前日に既存の機材の配置換えと配線を済ませ

最適な設置場所を準備するほどの意気込みで迎え入れました。

DCA-301、こだま西瓜の箱に収まり札幌からの長旅を経ての到着です。


丁寧な梱包を解き、まずは外装のチェックから。

フロントパネルには目立った傷も無く、ツマミもすこぶる綺麗で

リアパネルや端子類もとても綺麗な状態であることに驚きました。

キャビネットには説明通り艶なしの黒が吹かれていて

念のため内部も覗いてみましたが、トランスや配線を含め

丹念に清掃したことが窺える予想以上の内容です。

商品概要に記されていた通りパイロットランプはLEDに交換されていて

程よい明るさでチラつきもなく点灯しています。

これだけ見ても、送料込みでわずか三千円という価格設定に

趣味で修理や調整をされている出品者さんの良心を感じます。

近頃はレトロとかヴィンテージ、昭和の希少品などと煽り

ボロクソなジャンク品を数万円もの値段で出品する輩が多く

いつも苦々しく思いながら見てますが呆れた状況です。

そんな流れに乗らず格安で提供してくださる札幌のお爺さまって

いったいどんな方なんでしょうね。気になります。

・・などと思いを巡らせながら

そそくさと、予め準備しておいたケーブルを繋ぎ終え

ワクワクしながらの通電、緊張が一気に高まる瞬間です。

電源スイッチはレバーが長めのトグル形状でしなやかな動き。

カチッでもなければパシッでもなく、カシャッでもない。

シュルッかな?ツルッかな?とにかくユルイ音がします。

それはともかく、軽やかに引き上げるとモニターからわずかにポツ音!

スピーカー保護のリレー回路が割愛されてるローコストモデルなのに

ショックノイズがほとんどありません。これは意外でした。

古いアンプはリレーの劣化でトラブルが起きやすいので無い方が助かりますが

リレーが無いと電源ONの際にはパツン!とかボッツン!とか

かなりのレベルで盛大にショックノイズが出るものですから

予想外というか、この小声で呟くようなポツ音が意外すぎて驚きました。


通電してから数分経過。

ハムノイズやガサガサ音が出てないことを確認して

いよいよ動作状態の確認と音出しです。

マスターボリュームは40接点が刻まれたクリックタイプですが

ゴリゴリせずとても滑らかに軽く回ります。

回して行くと、時折ジリジリ音の微かなノイズが出ましたが

古い個体なのでこれは許容範囲、ゆっくりと回してあげれば大丈夫ですし

接点復活剤で改善できると思います。でもこの程度なら気になりません。


さあ、オーディオインターフェースを介したApple musicの音源と

離れた所に置いてあるCDプレーヤーからのケーブルを繋ぎ込み

フォノ・イコライザの力量を確かめるためのアナログ盤もセットして

いよいよ待ちに待った試聴開始です。

いったいどんな音を奏でてくれるのでしょうか。

(続く)



2022年10月28日

70年代の玩具箱(#1)

 


先日、フリマサイトでOTTOの旧いアンプを目にしまして

それが送料込み三千円という潔い売り値であることと

札幌在住のお爺さまが趣味で調整や部品交換をされてることや

この個体も内部清掃やボンネット塗装などが施された上に

パイロットランプをLED球に交換したりしてあって

プロポーションも顔つきも70年代そのものとあっては

これはもうポチるしかないじゃないですか。

私の好みが見透かされているかのようにドンピシャなんですもん。

とは言いながら「いや、ちょっとだけ冷静になろう」

天の声が聞こえた気がして、ポチる前にあれこれ調べてみました。

OTTO DCA-301、1977年発売のエントリーモデルです。

W400mm/H155mm/D255mm、やや小ぶりなミディアムサイズは

往年のマランツやDENONの風貌にも似た感があります。

そして興味深いのは経年劣化が著しいトランジスタを多用せず

パワー段もイコライザ部もICで構成されていることでした。

発売当時の価格が¥27800という安価な製品ですから

コストを抑え込むために必要な手段だったとは思いますが

45年経過した今、これが幸いして動作不良が起きにくい気がしたのです。

この時代の多くのアンプはトランジスタやコンデンサの劣化によって

購入後暫くするとノイズの発生や不安定な動作になりがちなんですよね。

これは部品点数が多く回路も複雑な中級機や高級機ほど顕著であって

ある日突然プッツンしたり、ブツブツボソボソ言い出したりするのです。

そんな悔しい思いを今までに何度も経験しましたから

主要部品がIC構成で回路保護のリレーも入ってないということは

シンプルさゆえの良い結果が生まれるだろうと確信したのです。

けれどあくまで冷静を装う私は、その夜はそのまま床に就き

「売れていたなら縁がなかったということで良しとしよう」

そのまま眠りにつきまして、翌日の朝になってからポチリました。

わずか三千円の買い物に慎重すぎる、そうは思いましたけど

なにぶん根っこの辺りまでケチ臭い人間なものでして(笑)


しかしながら・・

翌日まで購入を待ったのにはもうひとつ理由がありました。

実はこのお爺さまがヤマハのCA-400も同時に出品されていて

コンデンサと抵抗を交換して綺麗に整備された個体が6600円だったんです。

こちらも好きなモデルですし、とても割安なので大いに悩んだわけですよ。

つまり本命はこちら、OTTOは補欠みたいな優先順位でしょうか。

翌朝サイトを開いてみると、やはり人気のあるCA-400はSOLDでした。

やっぱりなあ・・不思議と悔しさは全く感じませんでした。

負け惜しみではなく、それは私にとって良い結果だったと思うのです。

CAシリーズは音と美貌に定評があって私も一目置いていましたが

パワー部が高熱を発生するためなのかトラブルが多いんです。

よほどしっかりとメンテナンスされた個体じゃなければ

おそらく使い始めてじきに不具合が生じることでしょう。

そう考えると、回路がシンプルなOTTOの方が長く使えそうに思えて

当初の予定通り(確信を抱いて)購入したのです。


その日のうちに出品者さんから発送のお知らせがありました。

札幌からの到着は発送日の翌々日、期待がぐんと膨らみます。

わずか三千円の45年前のアンプ、果たしてその実態は如何に!

(続く)



2022年10月27日

Obihiro on My Mind



気がつけば、とうの昔に夏は過ぎ去り

秋を実感する間もなく冬が訪れようとしています。

今年もあと二ヶ月ほどしか残っていませんが

私はというと、相変わらず緩い日常を過ごしております。

九月の後半に帯広へ帰り、家仕舞いの打ち合わせを済ませ

いよいよ実家や土地の処分を始めることになりました。

母の亡き後、一人で住んでいた姉は市営住宅に移り住み

古い家は、かつて家族が暮らしていた痕跡だけを残し

やがて解体され更地となるのでしょう。

私にとっての帯広は

帰る家の無い「ふるさと」となったわけです。

でも、たまには「帰る」つもりでいますからね。

帯広の町と皆さん、その折には何卒よろしく。


およそ二ヶ月ぶりの近況報告でした。

つい先日購入した古いアンプの話は次の機会にでも。