2012年11月11日
ガラードとディスク・プリーナーの思い出
ガラード401、リム・ドライブの無骨で重々しいこのターンテーブルを初めて目にしたのは渋谷の百軒店に在ったロック喫茶ブラック・ホークでした。元はジャズ喫茶であったその店のブースの中で、2台が並べて置かれ、オルトフォンのSPUというこれまた重量級でゴツイ顔付きのMCカートリッジで休み無くレコードが掛けられるのを見ながら「カッコいいなあ・・」と、羨望の眼差しで見つめていたものです。時は70年代初頭、渋谷の街が今ほど賑やかではなかった頃のことですが、ペンタングルやフェアポート・コンヴェンションなどを知り得たのもこの店のおかげでした。木の椅子に腰掛け、一杯の珈琲を注文して数枚のアルバムを聴きながら過ごす時間は、当時の私にとって最高の贅沢だったことが思い出されます。そして、いつか自分の部屋でガラードとオルトフォンのセットで音楽を聴きたいものだと思ったほどに、私はこのカッティング・マシーンのような風貌のターンテーブルに一目惚れしてしまっていたのです。
残念ながらその想いを果たすことは出来ませんでしたが、一番好きなターンテーブルは?と問われれば、今でも私は躊躇無くガラード401だと答えることでしょう。仮にこの先、ひょんなことから手に入りそうになったとしても今さら家に置こうとは思いませんけどね(笑)
形こそ異なりますが、その後DENONのターンテーブルが好きになったのも、業務用としての同じ匂いを感じたからだったような気がしています。
watts PAROSTATIK DISC PREENER、この円筒形のレコード・クリーナーの存在を初めて知ったのもブラック・ホークだった覚えがあります。ブース内で次に掛けるレコードの盤面をスルスル~ッとこれで拭いていたような・・おぼろげですが、シンプルで無駄のない形状のこの製品を私は今でも愛用しています。細かく複雑な溝で刻まれているレコード盤の埃を完全に除去するのは不可能に近いことですから、クリーナーで拭き取るなんて行為は単なる気休めにしか過ぎません。いくら上質なベルベットで作られた見た目にも高級感溢れる物であってもそれは同じですから、比較的安価でスマートなこれを当時からとても重宝していたものです。
ちょっと分かり辛いかも知れませんが、中にスポンジを詰めたパイプが入っていて、それを水で濡らしてから挿入すると表面のベルベット素材に湿り気を与える構造になっているので、一般的な(乾いた)クリーナーに比べると静電気の発生を若干抑えることが出来ます。これはある意味とても合理的な発想で、水分の含有率は大きく異なりますが水で湿らせたガーゼで拭き取るのと同じ効果がありますから、ある程度の汚れや埃の除去には効果があると思います。ま、前述の通り「気休め」程度の話ですけどね。
ガラードとディスク・プリーナーの思い出、でした。
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