2014年7月21日

おそまつ



猫が昼寝をするリビングと
女ども二人が寝起きする寝室は
エアコンのおかげで蒸し暑い梅雨の間もさぞや快適だったことでしょう。

ならば!と、僕の部屋にも導入することを決め
旧友ツトムくんの好意によって
真新しい窓用エアコンが石神井から運び込まれました。

迎え入れる僕も
遠路遥々やって来たツトムくんも
双方の思惑が合致して何だか嬉しそうです。

意気揚々と2階まで運び上げ
早速設置に取り掛かる彼、それはそれは頼もしい後姿でした。

ところが・・
その至福に満ちた時間は、そのわずか数分後に暗転することに。
本体を取り付けるためのフレームが
僕の部屋の窓とサッシの形状から合わないことが判明したのです。

が、があーーん。。。

二人共、いきなり伏し目がちとなり
声のトーンも徐々に下がって行く一方と相成りました。

確かに、よく見るとちょっと不思議な形状の窓周り。
お洒落のつもりで付いている出窓風の化粧版と
段差のあるサッシのレールが行く手を阻むのです。
補助金具があれば何とかなりそうな気もしたのですが
そいつを固定するためには出窓の板に太い木ビスを打ち込まねばならず
それが判明した瞬間、がっくりと肩を落として撤収せざるを得ませんでした。
取り外したときに木ビスの跡がくっきりと残るくらいなら
一思いに壁に穴を空けてセパレート型を設置する方が
後の事を考えると綺麗で何ら支障ないのですから。

せっかく運び上げたエアコンを再び担ぎ
階段を下って車まで積みに行くツトムくんの後姿に
なんだか悲哀を感じてしまいました。
明らかに気落ちしている背中のシルエットです。

目的を持って臨んだ一日が
達成感も無いまま過ぎて行く時間は中途半端で虚しいものです。
好きなあの子と何も出来ずに終わってしまった夜みたいな
そんな儚さがいつまでも残ります。
およそ二年ぶりの雑談をしつつ、飯を喰いに出掛け
なんとなく鈍い音を響かせながら、ワンボックス車は石神井へと帰って行きました。

ツトムよ、すまん。

お礼に用意しておいたアコギは
気持ちだからと、そのまま持ち帰って頂きました。
それくらいはせねばねえ。

夜になって、開け放った窓からは心地好い涼風が吹き込んでいます。
昨日までとは打って変わった、乾いた風です。
たぶん明日には梅雨明け宣言されることでしょう。
果たして、このまま夏を乗り切れるのか
一抹の不安を抱えた夜は更けて行くのでありました。

・・おそまつ。

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