東白楽の空は雲に覆われ
残念ながら皆既月食は見られなかった。
店に着いた早々、リハを始める前に居合わせた友人の奥様から
「お誕生日?じゃあ一杯ご馳走させて」と促され、ググッと生を戴く。
さあて始めっか、ひとしきりした後セッティングを開始するも
あらら・・これがブランクってやつかい、声が伸びない。
さすがにこの歳ともなると、歌わない期間が長いと辛いものがある。
出番までかなり時間がある、こりゃ飲むしかないな。
そして案の定、飲み過ぎた。
ぽつりぽつりと馴染みのお客さんがやって来る。
予想してたよりは集まって頂けたようで一安心、ありがたいことだ。
定刻より少々遅れての開演。
まずは、最近になって妙に仲良くなってしまった感の池内光子さん。
(僕は日頃みっちゃんと呼ばせて頂いている)
今回の合同バースデーライブのゲスト、友情出演である。
始まる前から空気が和んでいたせいかノリがいい。
そうじゃなくてもアコーディオンの響きは心地好いのだが
この夜のみっちゃんは明らかに乗っていたし、可愛いとさえ思えたほどだ。
もはや芸人の域だね。
たまには一緒に飲みたいものだが、彼女まったくの下戸なので常に素面。
けど、相対した時の(適度な)おとぼけ具合が僕は好きなのだ。
たぶんこれから先、長い付き合いになるような気がしてる一人である。
やがて還暦を迎えるまでは、足取り軽やかに踊っているよう釘を刺しておいた。
10Kg以上ある重たい楽器を肩からぶら提げているのだから
足腰への負担は相当あるだろうしね。
頑張ってくれよ、みっちゃん。
芸人と言えば、この男も益々磨きがかかってきている。
ビト、僕と同じ誕生日で共に北海道の生まれ。
数年前から続いている合同バースデーライブの相方だ。
どこまでがMCで、どこからが歌なのかよく分からない流れが凄いと思う。
アコギ1本でロック・スピリットを醸し出すパフォーマンスが相変わらずいいし
何といっても腰のくねりと(落ち着きがないほどの)足元が楽しい。
そう、楽しませてくれるんだ。いつも彼は。
おまけに僕の大好きな場末の香りを放ち続ける。
安酒と煙草、ざわつく酔客が似合う歌は、実はそう多くはないのだが
この男の歌は、間違いなくその数少ないひとつであり
ブルーズにも通じるこのバタ臭さが僕は好きだ。
知り合ったのは10年ほど前、とある居酒屋で隣り合わせたのが始まりだった。
口数が少なく、痩せて精悍なマスクと鋭い眼光が印象的だったことを覚えている。
それが今じゃ、体も含めずいぶんと丸くなってしまったのは
10年の間に刻まれた人生の道程ってやつなんだろうな。
太くしっかりと根付いている感じがした。
恒例となった合同バースデーライブ、僕はうっかり口を滑らしてしまった。
「君が還暦を迎えるまでは続けるよ」と。
後から気付いたが、そのとき僕は77歳である。
まあいいさ、喜寿と還暦を共に祝おうではないか(笑)
そんな強気の発言(失言)をした我が身。
飲み過ぎを理由にはしたくないが、トリだというのにお粗末な出だし。
3曲ほど歌い終わったところでアルコールが飛び
ようやく我に返ったという体たらくを見せ付けてしまった。
これじゃいかんね。
月に10本前後の現場をこなすビトちゃんやみっちゃんと比べ
年に1度か2度くらいしか歌わなくなった「自称」ミュージッシャンとの違いはここにある。
メッキは剥がれやすいものなのだ。
まだまだだね、反省してます。
けれど酔いが覚めてからは仕切り直し、
温まったエンジンは回転数を上げて行ったのさ。
すると今度はレッド・ゾーンを超えてしまい、ミッションが悲鳴を上げ始めた。
いかんいかん、これはいかん。
何事も少しは余裕を持たせなくてはぶっ壊れてしまう。
エンジンが白煙を上げる直前で辛うじてゴールした気分。
お客さんは楽しんでくれたようだけど、内心ハラハラだったのさ。
いやはや、少しは歳のことを考えなくっちゃ駄目よね。
ちょっとだけでもセーブして、粋なところを見せられるくらいになるまで
まだまだ修行せねばと痛感した62歳の夜である。
(たぶんボーマスは、それを見抜いていただろうな。こわやこわや)
間一髪でチェッカーフラグの僕、終演後は安堵の表情(笑)
可愛いみっちゃんと記念撮影さ。
若い時分なら己の不甲斐なさに自棄(ヤケ)酒を煽るところだが
歳を取ってしまうと、こんなズルさと開き直りで済ませてしまうものなのね。
「大人っていうのは、もっと素敵なんだ」
ジャックスのラブ・ジェネレーションを歌っていた15歳の頃の事が脳裏を掠める。
「泣きながら飲めない酒を交わすのだ」
・・あれから47年、今じゃ飲兵衛になってしまったわ。
ひょっこりやって来た長男と、
十数年の付き合いになる娘みたいな友人(知人?)と。
今や人妻、27歳におなりになったとか。
みっちゃん曰く、「かずらさんに似てませんよね?イケメンだあ~」
こらっ!その昔は俺もイケメンだったのだ!!
ま、いいさね。
最後に歌った「一番列車のブルーズ」
格安弦Ashtonの耐久性を試すためガッシガシに弾き倒したけれど、
切れない!これは使い物になると確信できたのが嬉しかった。
無くなる前に(醜い大人買いで)買占めようかな?
鎌倉の白髭さん、これいいよ!!
そしてガンボに告ぐ。
あなたが助言した通り、一番列車はミストリー・トレイン風の味付けになった。
聴かせてあげたいわ。
そんなこんなで・・
昨晩お集まり頂いた皆さま、
自らを祝う夜に花を添えて頂いて感謝してます。
かずら元年、この歳になって自らを見直す良い機会となりました。
この場を借りて御礼申し上げます。
いずれかの後、更なる進化を遂げた姿をお見せしたいと思っております。
坂道を転がり落ちながらも、それが愉快に感じられるような
そんな人生を全うしたい所存です。
喜寿を迎えるまで歌っていたなら、笑ってお付き合いしてください。
今はその過程です。
ボーマス、レイナ、リアリー・ミュージックの松田夫妻(Tシャツありがとう)
そして飲み過ぎ注意のメッセをくれたそこのあなたにも感謝!!
な、良き夜でありました。
みんな、ありがとうな!
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