2012年4月27日

まつたろうと焙り家、そして・・第二章


まるで吸い込まれるように、自動ドアの向こうのカウンター席に座った私。
あの店の前を通りかかると、恐ろしいほどの力で引き寄せられるのかも知れません。
もはや電車は諦め、ビールを注文して居合わせた友人と暫しの歓談。
彼女とは久しぶりに顔を合わせたからでしょうか、
スマホ、猫、犬、家族愛・・なんだかたくさんのことを語り合った気がします。

しばらくすると、カウンターの奥の方で、お客の一人がカードを使ったマジックを始めました。
これがまた、ぽっかりと口を開けたまま言葉を失ってしまうほどのテクニックでして
見事としか言いようのない技に一堂唖然としてしまいました。
私なんて、だらしなく口を開けて立ち尽くしてましたもんねぇ~(絶句?)
ただ、そこに居た誰もが抱いた共通の感覚として
見てるうちに酔いがすっかり醒めてしまい、だんだん不愉快になってくるのです。
いったい、どーなってるんじゃあー!!という疑問が膨張し続け
やがて理解の限界を遥かに超えてしまうと、人は皆この状態に陥るようです。

パニックに陥った脳細胞を冷却しなければなりません。
皆に別れを告げて、店を出て歩くことにしました。
未明の夜風が心地好かったので、スタスタと上麻生道路を東神奈川方面へと向かい
1号線を右折して反町へと向かう、まるで車のようなコースを辿り
反町駅の近くまで来てからようやくタクシーを拾いました。
かなり飛ばし屋の、やたらと揺れる車には閉口しましたが
おかげで?びゅびゅーんと家まで着いてしまいました。

・・ここまでは、極めて順調だったのですが
なんと、玄関ドアの鍵が開かないではないですか(がーん!)

どうやら普段は閉じない方の鍵を長女が何気なく閉めてしまったようです。
錆び付いたその鍵はビクともせず、何度トライしても回りません。
未明の玄関先に立ち、鍵をこじ開けようと躍起になる男の姿、これは怪しい。
近隣の住民に見られたりしたなら、間違いなく通報されるでしょう。
それでも力まかせに開けようとするうちに、
哀れ私の鍵は無残にもグニャグニャに変形してしまいました。
もはや観念するのみの結末。
電話を掛けるのも忍びない朝帰りのオヤジは、やむなく自宅前の車に乗り込み
狭い車内で家族が目覚めるのを待つ羽目となってしまったのです。

窮屈で眠れないまま、がらがらっと雨戸が開く音が聞こえた時は
捕らえられていた囚人が解放された瞬間のような安堵と喜びが交錯しました。
なんたって軽自動車の車内は狭いもんです。
たとえシートを倒したとしても、眠れるような環境じゃありませんからね。

カチャッ!と軽やかな音と共に(開かずの)玄関ドアが中から開きました。
女房殿の第一声「電話すりゃいいのに~」呆れてます。
何を言われようとも、私はベッドに入ることができる喜びに満ち溢れ
着の身着のままで布団の中に潜り込みました。
そしてこの後、更なる災いが降りかかることになるとは・・
(続く)





2012年4月26日

まつたろうと焙り家、そして・・


昨晩初めて訪れた友人の店「まつたろう」
評判通り、旨い料理と格安の値段に感激しました。
なんたって、店主は修行を積んだ板前さんですからね。
ネタの良さと、朝から丁寧に仕込まれた煮物の味は絶品です。
この新鮮なお刺身が並んだ人気の刺身盛合せ、
一人で戴くのはとても贅沢な気もしますけど、なんと驚きの¥980!!
煮魚・焼き魚、おまけにご飯セット(ご飯・味噌汁・糠漬付きで¥250)まで平らげて
ゲーップとばかりに、お腹いっぱいになるまで飲み食いして店を後にしましたが
家が近ければ度々足を運ぶであろう良きお店のオープンを祝いたいと思います。
東横線の白楽駅東口(六角橋の反対側)改札を出て左方向へ20mほどの所ですから
この提灯を見つけたら引き戸を開けて入ってみてください。


白楽居酒屋 まつたろう
OPEN 17:00 CLOSE 24:00(ラストオーダー23:00)月曜定休
横浜市神奈川区白楽103 TEL 045-432-2878




新しい店が出来た反面、長年に渡り親しまれてきた(歴史的な)店が閉じられます。
白楽駅から上麻生道路を横切り、神奈川大学入口の信号を左へ少し上がった所
黄色い行燈が置かれている小さな居酒屋、焙り家です。
六角橋周辺のミュージシャンが夜な夜な集う(ほぼ終夜営業の)お店でした。
店主はギタリストです。
今月29日で閉めると聞き、まつたろうからの帰りに寄ってみました。


私はライブが終わった後、ここへ寄って明け方近くまで飲むことがありましたが
大勢の素晴らしきシンガー、ミュージシャンたちと出会った場所であり
何かとお世話になった思い出深い店でもありました。
閉店するのは残念ですが、店主が決めたことに立ち入ったり
或いは詮索したりするのは野暮というもんです。
この先どこかで顔を合わせる機会もあるでしょうから
軽く飲んで(すでにお腹いっぱいで入らない)お疲れさま、ありがとうと言って店を出ました。
29日のファイナルには所用で顔を出せませんが、長い間ご苦労さまでした!

焙り家 横浜市神奈川区六角橋3丁目2-2-102 TEL 045-491-7822




この時点では家に帰る気持ち十分。
電車のある時間帯に東白楽の駅へと歩き始めたのですが・・
上麻生道路に面した馴染みの店の前を通り過ぎることなど出来る筈もなく
まるで吸い込まれるようにカウンター席に居た友人の隣に座ったのでした。
当然・・お約束の朝帰りです。
この後、とんでもない事件に巻き込まれることになったのです。
(続く)



2012年4月24日

どうやら今年は不作のようです

昨晩暴露したように、今や下戸ではない私、
明日の休日は六角橋界隈を飲み歩きます。
まずは先週白楽に開店した友人の店、肴が旨いと評判のようです。
夕方5時からやっているとのこと、早めに行ってみます。
お次は惜しまれながらも今週いっぱいで閉店してしまう「あの店」
こちらもニュースを耳にした方々で連夜賑わっているそうな。
夕刻から白楽周辺に出没しますので、見かけたら声を掛けてくださいね。



さてさて、収穫が遅れていた我が家の敷地内の筍、
本日ようやく今年最初の物が大家さんから届けられました。
待ちに待った旬の一品です。


少々小ぶりですが、これくらいのが一番旨いんです。
この土の付き具合もまた絶妙!期待が膨らみますね~
そして今夜は待望の筍ご飯、柔らかく香りがあって実に美味でした。

大家さんは造園業でして、筍も専用のスコップで掘り起こします。
その音がまたダイナミックでして、この時期は早朝からドッスンドッスン響き渡ります。
けれど今朝は何故か静か・・
聞くところによると、例年より量が少なく発育も良くないそうです。
本来なら今頃は敷地のあちこちにニョッキニョキ生えて来るんですから
確かにいつもの春とは違うように感じます。

我が家の筍ご飯を楽しみにしている友人たちにも振舞いたいのですが
柔らかく一番美味しい期間に行事が入ってしまっているので
せめて来月早々にはと思ってはみても、今のところ微妙な雲行きです。
うーん、困った。


2012年4月23日

歴史秘話「下戸時代」

信じてもらえないかも知れませんが
実は私、二十代前半くらいまでは下戸でした。
どこをどうやって今みたいに飲めるようになったのか分かりませんが
当時は酒を全く受け付けない体質だったのです。
煙草なら16の時からハイライトをスッパスパ吸ってたんですけどねぇ。

今、焼酎を飲みながらPCに向かっていて思い出したエピソードがあります。
あれは・・高校を卒業する前の晩のことでした。

銭湯へ行った帰り道、当時可愛がってくれていた地元の先輩諸氏が集う店に立ち寄り
(サウンドコーナー店主の高村氏や帯広畜産大学生だった糸川氏などの酒豪です)
こともあろうに、グラスになみなみと注がれた焼酎をクイッ!と飲んでしまったのでした。
記憶では私の送別会だったような気がするんですが、
その場の楽しい雰囲気に後押しされるように(気軽に)クイッ!と行っちゃったんです。
(生まれて初めてそのとき口にした焼酎とやら、まるで水みたいな味だったんですもん)
それからしばらく談笑した後、トイレに行こうと席を立った瞬間
プチン・・と何かが切れるように、視界が消え失せました。

気がついたのは数時間後、白々と夜が明ける頃でした。
私はお店の座敷に寝かされていたようです。
糸川氏の心配そうに見つめる顔が最初に見えてきました。
なんでも、バッタリと見事に倒れたそうです。
意識を失った私の姿にかなり動揺したらしく、糸川氏はずっと指圧を続けていたとか。
「頭打ってなくて良かったわあ~」と安堵の言葉を口にしながら
私が下戸であることを知らない彼は「湯上りやったし、寒い外から来てすぐやったし・・」等々
無様な姿の私への労いというか何というか、ずいぶん気を遣ってくれてました。
たぶん、自分が無理に飲ませた格好になったことで責任を感じてたんでしょうね。

しばらくして外が明るくなった頃、糸川氏やお店の方々にお礼を言って
まだ冬の寒さが残る3月の北海道の凍てつく路を歩き、家に戻り布団に入りました。
これが人生最初の「朝帰り」だったと思います。
その日の卒業式には出席しましたが、頭がボーッとしていたせいか
体育館の窓から見えた薄曇りの空しか覚えていません。
苦い思い出ではありますが、酒の洗礼を受けた記念すべき出来事のお話でした。

そんな下戸時代(江戸時代じゃないよ)の逸話のある私、
今じゃ立派な飲兵衛なんですから、人間の体って不思議なもんですね。
倒れることもなく、千鳥足で家までちゃんと帰れるんですから!!(笑)





(筆者後記)
今夜の日記は、かずら元年の歴史を紐解く上で貴重な文献となったことであろう。




2012年4月22日

千鳥足で


張り替えたばかりの弦は、弾いていて心地好いものですが
私の場合、数日過ぎてやや伸びてきた頃合の音が好きなんです。
例えて言うなら前の晩のカレーみたいなもんでしょうか、
ライブを一本終えた翌日の方がバランス良く鳴るような気がします。

とは言っても、それが半年以上経ってしまっては少々やり過ぎですよね。
愛用のGUILD、夜毎ちまちま弾いてる時にはさほど気になりませんでしたが
いざ本格的に弾いてみると、やはり衰えは隠せないようです(当たり前だ!)
思えば昨年の10月、それ以来張りっぱなしでしたからねぇ。

ちなみに私は高価な弦は使ってません。
ほんの数回だけコーティング弦を使用してみましたが、肌に合わないのでやめました。
今は(昔ながらの)フォスファー・ブロンズで、おまけに超格安のDARCOです。


Woodmanという楽器店で¥367で売られている代物でして、
店頭やWEBではパッケージを替えて陳列してるのですが、
私は特別にお願いしてオリジナルの箱に入ったままの状態で購入しています。
市場にはあまり出回っていませんが、GUILDやGibsonなどとは相性が良く
音質もさることながら、その破格の安さが魅力で数年前から愛用しているのです。
(安くて良い物を見出す、これは私の生き甲斐でもありますからね!)

うーん、あれこれと前置きが長くなってしまいましたが
実は書きたい事柄のテーマは他にありまして・・

今日(密かに)新曲の歌い込みをやっていました。
自分でダメ出しを何度も繰り返しながら、かなりしつこく歌ったものですから
おかげで喉を潰してしまい、あまりの不甲斐なさに我ながら少々落ち込んでます(笑)
けど、しっかりと仕上がりましたよ。それも2曲!
寒い一日ではありましたが、確実に春らしくなっているようで
心と体が目覚めて歌い出したくなる感覚はとても気持ちがいいものです。

今年還暦を迎える私、別に大それた感慨を抱くことは決して無いのですが
なんとなく、己の節目としての歌になってしまったような気がします。
幾つになっても今まで通り、うろうろふらふら。
こんな大人が居てもいいじゃないか、みたいな感じ・・かな?

「千鳥足で」
来月のライブでご披露させて頂きます。
毎日が千鳥足。な、ワタシ!!(汗)


2012年4月20日

Thank you Levon !

彼が叩くスネアの音が大好きでした。
シンプルで、時にダイナミックで、
とりわけ歌との絡みは絶妙だったと思います。
レギュラーグリップのせいもあったのかも知れませんが
現在のロック・ミュージシャンに見られるマッチドグリップには無い繊細さがありました。
余計な音を一切出してなかったのは、自身が歌いながら叩いていたからなのでしょう。
歌と楽器の隙間に在る空気感、私にそれを教えてくれたのも彼でした。

レヴォン・ヘルム、
ホークスを経て、やがてザ・バンドとして大成させた立役者は
15年ほど前に喉頭癌の宣告を受け、歌うことがままならなくなったものの
ドラムとマンドリンからは離れることなく演奏を続けていました。
それが数年前に奇跡的な回復を遂げ、ライブやレコーディング活動に復帰したのですが
病魔に侵された体はやがて末期癌へと進行して
世界中のファンの祈りも虚しく、昨日帰らぬ人となってしまいました。

数え切れないほどの名曲を残し
たくさんのことを教えてくれたレヴォン、
71年の生涯でした。



70年にウッドストックのスタジオで収録された「King Harvest」
私はこの演奏が今でも好きです。
高画質・高音質版が見つかりましたので載せておきます。
時折レヴォンのスネアがスパッ!と鳴る度に
私は少年のように心躍らせるのです。

Thank you Levon !



2012年4月19日

灯りがまたひとつ・・


夜毎ミュージシャンが集う小さな小さな飲み屋、
六角橋の焙り家が今月で閉店するそうです。
つい先ほど、mixiへの店主の書き込みで知り
あまりにも急な話に驚いています。

私は自分のライブが終わった後、
日付が変わる頃にお邪魔しては
明け方近くまで居座ってしまうことが何度かありましたが
店主の溝さんや奥方キャンディーにも良くして頂き、
とても楽しめる貴重な空間でありました。

近頃はライブから遠ざかっていたせいで
昨年の夏以降は足を運んでいませんでしたが
いざ閉店という二文字を目にしてしまうと
とても残念な気がして仕方ありません。

たくさんの人間たちと知り合いました。
たくさんのことを語り合いました。
一度だけ(あの狭い店で)ライブも演らせて頂きました。
私なりの思い出が、旧い椅子とカウンターに刻まれているのですから
とてもとても残念で、淋しくなってしまいそうです。

29日までは営業しているそうなので
来週中には一度顔を出したいと思っています。
或る意味、私にとっては・・
「音楽の殿堂」とも言える店でした。
またひとつ、灯りが消えるわけです。
淋しい。