2021年10月15日
「16センチの神様」第三章
2021年10月12日
「16センチの神様」第二章
ある程度の予想と覚悟はしていたつもりでも、いざ届けられた現物を手にしてみると、その軽さと心許ないほどの安物感で不安は増して行った。それほど軽く薄い板材で作られたエンクロージャーは、正直言ってミニコンポに毛が生えたようなものだったからだ。おそらく箱はコンポーネントのジャンク品を流用した物なのだろう。それでもただひとつ救いとなったのは、パンチングメタルの保護ネットから透けて見える16Cmユニットの存在感だった。これもおそらく、4チャンネルステレオ時代のリアスピーカーとして使われていた頃のユニットではないかと推測されるが、メルカリの画像で感じた時と同じように、芯の通った実直そうな顔つきを実際に目にすることで、猜疑心は消え失せ期待感が勝るようになってきた。いかんいかん、先入観は捨てなくちゃ。
はやる気持ちを抑えつつ、まるでイスラム教徒がヒジャブをそっと脱ぐかのように、プチルゴムの粘着剤で固定されていたパンチングメタルを外す。露になったそのユニットは、コーン紙もクロスエッジもセンターキャップも、何ひとつ傷みが無いどころか、およそ50年を経ていることが信じられないくらい綺麗な状態だったのだ。作者が後付けしたバスレフポートも丁寧に仕上げてあるし、外観上の問題点が一切ないことで期待感は更に高まって行くのだった。手早く結線を済ませDS-251の上に無造作に置くと、かねてから音を知り尽くしているライ・クーダーの「紫の峡谷」を流し始める。イントロから歌い出しに入った途端・・な!なんじゃこりゃあああ!!我が耳を疑うほどに驚いた。2021年10月10日
「16センチの神様」第一章
事の始まりは暇を持て余しながら開いたメルカリ、そのわずか数時間前に出品されたスピーカーに目が留まった。東芝の16Cmフルレンジを松下製の小型エンクロージャーに組み込み、容積不足なのでバスレフポートを追加したという何やら怪しい一品。画像を見ると、確かにユニットサイズに比して箱が小さすぎる。けれど何となく惹かれてしまう、色気を感じる顔つきだったのだ。おまけに送料込みで5千円を切っている、案外これはいいかもしれないぞ。ポチろうか否か・・数分間悩む。いや待てよ、ちょっとだけ確認してからにしよう。(この作者は出品する度にその製品の音をYouTubeにUPしていたので開いてみると・・)球のアンプで鳴り始めたその音は、おそらくスマホで収録されていると思われるためレンジが狭く、こりゃあ参考にならないなと諦めかけたのだが、やたらスネアの抜けと質感が良いことに気付く。全体的に乾き気味の音は、軽いコーン紙のレスポンスの良さなのか小気味いいほどだ。念の為、同じ作者が出品していたビクター製のアルニコのロクハンの音も聴いてみると(こちらは1万円を超えている)音に艶はあっても音像が引っ込み気味で活力に乏しい。よし、安いしスネアの抜け加減と歯切れの良さで東芝に決めよう!と相成りポチった次第である。
とは言っても期待を裏切られる顛末だけは恥、私の音に対するプライドと感性が地に落ちることだけは絶対に許されない。あからさまに容積不足とわかる小さな箱に収められた名もなきロクハンは期待した通りに鳴ってくれるのか?その実証のため、手元に届くまでの時間がどれほど長く感じられたことか。そして遂に、ポチッた翌々日(時間指定が出来ないから使いたくないJPの)ゆうゆうメルカリ便で届いたその品は、極めて軽々しく薄い板材で作られたエンクロージャーに収められていた。こ、こんなんで大丈夫なのかあ!?不安が過ったことは言うまでもない。(次章へ続く)
2021年10月9日
「おやすみ前の呟き」次回予告編
誕生日の午後、ゆうゆうメルカリ便でこいつが届いた。
もう、居ても立ってもいられないほど、雄弁に夜通し語り続けたいくらい喜びに満ち溢れて興奮しているのだ。 それをグッと堪えて飲んでいる私は、エヘラ顔の腐った老人と思われてもいいと思うくらい感動に酔いしれている。諸君、オーディオは30Cmのレコード盤と16Cmのフルレンジに尽きるのだよ。詳細は次回!2021年10月8日
69回目の神経衰弱
2021年9月8日
闘病記(最終回)
愛娘のその後をお知らせします。
八月前半から通院・点滴の間隔を空け、
2週間に一度の治療を受けてきましたが
今月6日の血液検査の結果、ほぼ正常値となりました。
体重も週に100g程度ずつ増えてきてますし
少し太って毛並みも良くなった気がします。
腎臓の飲み薬は暫く続けますけど
白血球の異常値も治ったので抗生剤は無くなり
食欲増進剤を時折飲ませるだけとなった次第。
これはもう、奇跡としか言いようがありません。
院長先生から「悪いとこ無いですよ」とまで言われる始末。
カリウム不足と赤血球の一部に基準値超えがありますが
この程度なら全く問題ないそうです。
7月の初診では助からない公算が大きかっただけに
この回復ぶりには目を見張るものがあります。
嬉しいです、とても。
日に7〜8回トイレのシートを替えたり
初めは嫌がっていた朝晩の飲み薬を
観念したかのように従順な姿勢になってくれたり
この二ヶ月間というもの
お互いが努力してきたように思えてしまいます。
とは言っても、まだ完治したわけではないですし
いつまた悪化するやもしれませんので
注意深く日々の様子を観察しながら
概ね元に戻りつつある日常を暮らして参ります。
次回の通院・点滴は月末、
その後は一ヶ月程度空けることになると思います。
ご心配頂いた多くの皆さま、ありがとうございました。
「闘病記」は本日で最終回とさせて頂きます。
2021年8月25日
3個目のストーン
最初の5人が好きだった。
ストーンズが、この顔ぶれじゃなければ
もしかすると当時の私は
気にも止めてなかったかもしれない。
昨夜、80歳のチャーリー・ワッツが逝き
初期のリズム隊は誰も居なくなってしまった。
チャーリー・ワッツのスティックは
一貫してレギュラーグリップだった。
その左手が奏でるスネアの音と
独特な刻みのハイハットは
60年代から今に至るまで変わっていない。
淡々と後ろで叩く凛とした姿は
やんちゃな男たちを見守っているかのようで
いつも涼しげな顔をしていた。
実は、私は今でも
スティッキー・フィンガーズまでのアルバムしか聴かない。
薄暗いパブの片隅で、安い酒を飲みながら
朽ちそうな床のステージで演奏する彼らを
すぐ近くで見ていたいからだ。
大音量のPAと、大観衆が渦巻くような
大きなホールの客席には行きたいと思わない。
アンプ直結の音と、今にも崩れそうな際どさが
大好きなストーンズの姿であり
その光景を思い起こさせてくれるアルバムは
私個人の感覚ではあるが
やはりスティッキー・フィンガーズまでなのである。
その歴史の中で
チャーリー・ワッツの存在は大きかったし
3個目のストーンが失われてしまったことは悲しい。
2021年8月25日
合掌・・