現在、私が愛用しているレコードプレーヤーYP-400は
60年代中期から70年代初頭にかけて各社の主流だった
ACシンクロナスモーターで駆動するベルトドライブです。
このモーターが交流電気の周波数に同期して回ることから
ローコストな割には正確な回転数が得られることで
当時のプレーヤーの駆動源として多くのモデルで採用されました。
ところが或る時期からACモーターの振動や回転に伴うゴロ音などが
音楽信号に干渉して音質に悪影響を及ぼしていると囁かれ始め
静寂さと正確な回転をサーボで電気的に制御できる利点から
駆動源がACモーターからDCモーターに取って代わり
精度の高い部品設計や回転機構を必要としない
ダイレクトドライブの製品へと移行してしまったのです。
でも、ACモーターがさほど劣っていたわけでもなく
DCモーターとの違いなんて聴き分けられるものじゃありません。
いわゆるこれは流行という世の流れ、
CDが台頭してアナログ盤が追いやられて行ったのと同じです。
よほど精度の低いベルトドライブじゃなければ
33と1/3回転が大きくピッチを変えることはないんですけど
やがてシンクロナスモーターを使ったプレーヤーは
悲しいかな、あっという間に市場から消えて行きました。
かく言う私も20代でオーディオに目覚めて以来
そのほとんどの期間、DCモーターのお世話になっていました。
数年前、構造がシンプルで無骨なシンクロナスモーターに
ふと哀愁のようなものを感じて購入したのがYP-400でして
使ってみると、やはりこれが一番アナログ的だと思えるのです。
だって、凄いことだと思いませんか?
このストロボスコープの縞目がほぼ静止する定速状態で
モーターシャフトの細いプーリーがベルトを介して
アルミダイキャストの重たいターンテーブルを回すんですよ。
しかも回転を制御する電気部品など一切無く、
ただひたすらに電源周波数に同期してるだけだなんてね。
モーターのトルクやターンテーブル内周の径を計算して
正確な回転を保つプレーヤーを作り上げた当時の技術陣に
途轍もないアナログのロマンを感じてしまうのです。
(まだまだ続く)