2022年11月8日

70年代の玩具箱(#9)

 


思うところありまして、マークオーディオの8Cmユニット

OM-MF519をマウントした美しき自作バックロードホーンを

某フリマサイトに出品して三日後に滞りなく販売できました。

予め梱包しておきましたので(大袈裟と思うほど厳重に)

午前中のうちにヤマト運輸の営業所までジムニーくんを走らせて

ネコピットをピピッとタッチして発送手続き完了です。


え?なにゆえ売却したのかって?

さしたる理由は無いんですけど、ブツが増えすぎてしまったもんで

売り物になりそうなものを整理しただけです。

バックロードホーンは、もう1セットありますからね。

マークオーディオの半分くらいの価格のユニットで

自己主張が強くて、とても癖のある音質なんですけど

ツイーターを追加したり、あれこれ手を加えたせいなのか

天塩にかけて育てたような愛着がありましてねえ。

ヤンチャな子ほど可愛いもんです。

たぶん、こちらはずっと手元に残しておくと思います。

ちなみに現在のメインモニターはダイヤトーンDS-251、

デスクトップとしては大型で極限状態のニアフィールドですけど

ツイーターを内側にセットして横位置で置いてますから

耳元でフルレンジが鳴ってるような感覚で聴こえます。

今やすっかり玩具箱と化した私の部屋では

70年代の音を構築するのに欠かせない存在となっているのです。

(続く)



2022年11月5日

70年代の玩具箱(#8)

現在、私が愛用しているレコードプレーヤーYP-400は

60年代中期から70年代初頭にかけて各社の主流だった

ACシンクロナスモーターで駆動するベルトドライブです。

このモーターが交流電気の周波数に同期して回ることから

ローコストな割には正確な回転数が得られることで

当時のプレーヤーの駆動源として多くのモデルで採用されました。

ところが或る時期からACモーターの振動や回転に伴うゴロ音などが

音楽信号に干渉して音質に悪影響を及ぼしていると囁かれ始め

静寂さと正確な回転をサーボで電気的に制御できる利点から

駆動源がACモーターからDCモーターに取って代わり

精度の高い部品設計や回転機構を必要としない

ダイレクトドライブの製品へと移行してしまったのです。

でも、ACモーターがさほど劣っていたわけでもなく

DCモーターとの違いなんて聴き分けられるものじゃありません。

いわゆるこれは流行という世の流れ、

CDが台頭してアナログ盤が追いやられて行ったのと同じです。

よほど精度の低いベルトドライブじゃなければ

33と1/3回転が大きくピッチを変えることはないんですけど

やがてシンクロナスモーターを使ったプレーヤーは

悲しいかな、あっという間に市場から消えて行きました。

かく言う私も20代でオーディオに目覚めて以来

そのほとんどの期間、DCモーターのお世話になっていました。

数年前、構造がシンプルで無骨なシンクロナスモーターに

ふと哀愁のようなものを感じて購入したのがYP-400でして

使ってみると、やはりこれが一番アナログ的だと思えるのです。

だって、凄いことだと思いませんか?

このストロボスコープの縞目がほぼ静止する定速状態で

モーターシャフトの細いプーリーがベルトを介して

アルミダイキャストの重たいターンテーブルを回すんですよ。

しかも回転を制御する電気部品など一切無く、

ただひたすらに電源周波数に同期してるだけだなんてね。

モーターのトルクやターンテーブル内周の径を計算して

正確な回転を保つプレーヤーを作り上げた当時の技術陣に

途轍もないアナログのロマンを感じてしまうのです。

(まだまだ続く)



2022年11月3日

70年代の玩具箱(#7)

 

手元に残っている旧いカートリッジ群を

玩具箱という倉庫から出して並べてみました。

左からSHURE M44G、同じくSHURE M97HE(別名ERA Ⅳ)

MC型のオルトフォンMC10super、オーディオテクニカAT-32Eです。

M44Gだけは購入後10時間程度しか使ってませんから問題ありませんが

他はかなり使い込んでるので状態が良くないと思います。

特にMCの王様オルトフォンに関しては

残念なことにダンパーの劣化で使い物になりません。

数年前に実装した際、アルバム2枚目で盤面に腹を擦ってました。

それを考えると、日本製品の耐久性はすごいものですね。

現在使用中のDENON DL-103も、テクニカのAT-32Eにしても

未だに音溝を難なくトレースしてくれるんですから。


この中からオルトフォンをジャンク扱いで出品しようかなと思い

公式サイトで針交換(ユニット交換)の価格を調べてみたら

なんと¥37400ですって。高いなあ、売れるかなあ。

ついでにヘッドシェルもご紹介しましょう。

左から、今ではあまり見かけないFR(フィデリティリサーチ)FR-S/5、

オーディオテクニカの代名詞的存在のマグネシウム合金製MG-10、

一世を風靡したSAECのアルミニウム合金製ULS-2などなど。

テクニカのMG-10は使い勝手が良かったので手元に数個ありますが

実は今でも販売されていて、¥4000ちょいで新品が買えるようです。

(とは言っても当時の倍の価格ですけどね)


この先、使うことが無さそうな物ばかりなので

終活を兼ねて、この辺りもフリマサイトに載っけてみようかしら。

わたし亡き後、我楽多扱いで捨てられるのもなんだしねえ・・

(続く)まだ続くのかい!



2022年11月2日

70年代の玩具箱(#6)

DAWとDACを兼ねたオーディオインターフェースとデジタルアンプ、

何気なくアンプの天板に直置きしてたんですが

黒の艶消し塗料が吹かれていたもんで

熱の影響で足の跡が残ってしまうことに気付きまして

急遽小型のスノコを仕入れました。

ホームセンターにて2枚セットで198円也、

百均で売られている物よりも質と工作精度は良さそうです。

たかが三千円のアンプといえども

気に入ったものに対しては手間と出費を惜しまないのが私の流儀、

ちまちましたことが好きなんです。

ふと、DCA-301のカタログデータを見てみると

トーンコントロールのターンオーバー周波数が

低域は50Hz、広域は20KHzに設定されてました。

一般的なこのクラスのアンプだと通常は100Hzと10KHzですから

低域広域のどちらも、これは極めて稀な設定値ですよね。

このアンプが中低域の持ち上がった音響特性であることから

元々100Hz近辺と10KHz辺りをブーストした設計なんでしょうね。

敢えて50Hzと20KHzに設定されたことが頷けます。

この手法はもしかするとモジュラーステレオの流れなのかもしれませんが

そうではないとしたなら、OTTOの技術陣さん攻めてますね。

真相はいずれ調べてみることにしましょう。

(続く)



2022年11月1日

70年代の玩具箱(#5)

 


旧いOTTOのアンプを迎え入れたことによって

少し離れた場所に在ったレコードプレーヤーも近くに移動して

座ったままで全ての機材に手が届くようになりました。

このL字コーナーに身を置くと、つい時間を忘れてしまいます。

なんたって、ちょいと椅子を右に回転させるだけで

ターンテーブルにレコード盤をセットできるのが快適すぎて

寝たきり老人ならぬ座ったきり老人の度合いが加速しそうです。

魔のL字コーナー、迷い込んだら人間をだめにするかも。

入口をMCカートリッジに替えてからというもの

楽しくて夜な夜なレコードを聴き漁るようになりましたが

(座ったまま掛けられるというお気楽感も大きな要因)

現在使用している40歳のDL-103 GOLDがあまりにも高齢なので

はて、現在は如何程くらいで買えるのだろうかと思い

あれこれ調べてみると、最安はアマゾンの¥39800でした。

私のGOLDは1982年製の発売20周年限定モデルなので

現在はオリジナルの黒いボディのDL-103のみとなりますけど

価格が数年前と変わってないことにちょっとだけ安心しました。

(とは言っても高いから新品は買えませんけどね)

ならばと、中古市場を見てみると

フリマサイトの平均価格が20000〜22000円、

カンチレバーが折れて針先の無い物がジャンク品で5000円前後でした。

特にジャンク品の数が多く、よく売れてるようですが

これはMCカートリッジの針交換が構造的に不可能なため

メーカーや代理店で本体ごと新品と交換してもらうシステムなので

ジャンク品を購入して針交換すれば新品よりも少々安く上がるからです。

現在の針交換がメーカー標準価格だと¥27000ですから

アマゾンで新品を購入するより8000円ほど安く入手できます。

これは売れて当然でしょうね。

そんな市場を目にすると、私の我楽多箱の中にも

売り物になりそうな品が幾つか有ると思いますんで

整理・換金して針交換の費用を捻出したいと思っています。

こんな具合にあれこれサイトを開き、

カートリッジの価格動向を見ていると衝撃的な発見をしてしまいました。

かつては5000円前後で買えた庶民的MMカートリッジSHURE M44Gが

アマゾンの正規品でなんと¥47800もしてたんです!

一瞬、桁を間違えたかと思うくらいびっくりしました。

天下のSHUREがフォノカートリッジの生産を終了したのが2018年、

わずか四年の間に市場の在庫が枯渇して高騰したようですが

いくらなんでも10倍もの値上がりとはねえ。

70年代、ドンシャリで押し出しの効く音がウケて

MMカートリッジの中で爆発的に売れた商品ではありますが

「価格の安さ」が最大の魅力だったんですからね。

私が所有してるのは2016年頃のメキシコ生産の個体ですけど

生産終了の噂が流れ始める前だったので4700円ほどで購入できました。

今は使ってませんが(金欠に備えて)大切に保管しておきます。


あ、今日から11月ですね。

(続く)



2022年10月31日

70年代の玩具箱(#4)

 


Apple music、広帯域で空間系の独特な音作りが施されてますから

再生機材がオーディオ製品ではなくても広がりのある音が楽しめます。

ただし、これもいわゆる「癖」の部類。

私のようにレンジの狭い旧い機材でアナログ感を楽しむ者にとっては

それが弊害となり逆効果になってしまうような音源が多々あるのです。

しかしながら私が聴きたいと思うミュージシャンやアルバムの殆どが

レアな物まで網羅されていて月額¥980というお得感が先立ちまして

多少のことには目をつぶりながら毎日活用させて頂いてます。


これを45年前のアンプ、OTTO DCA-301で再生してみました。

如何に高音質を謳うハイレゾ音源であっても

旧型アンプの再生帯域は現行モデルより遥かに狭いわけですから

音の面で恩恵にあずかることはないだろうと思いましたが

空間系の細めの音がアンプ側の音質と相まって

意外なほどバランス良く鳴ってくれました。

というより、出て来る音は完全にDCA-301が支配しています。

これは癖の強いアンプの本領発揮といったところでしょうか。

仮に以前利用していたAmazon musicだったとしたなら

おそらく中低域がダブついてしまっただろうと思います。

タイムリーにApple musicに替えたのが良い結果となったようです。

よし、合格!

前回、アナログ盤の再生で課題となったカートリッジ問題。

SHUREのMMカートリッジとフォノ・イコライザの相性が悪く

そこにアンプ固有の音質が重なりザラついてしまったものですから

長らく仕舞い込んだままだった旧いMCカートリッジに登場して頂きました。

1982年製DENON DL-103GOLD、40歳の老練です。

カンチレバーさえヘタってなければ十分活躍してくれるだろうと

まるで根拠のない思い込みと期待だけで事を進めることに。

ただし、DCA-301にはMCの増幅回路がありませんから

これまた倉庫の奥から旧い昇圧トランスを引っ張り出してきたのです。

1982年製SONY HA-T10、端子間に直結できる優れ物で

小ぶりですが正真正銘のステップアップトランスなんです。

けれど実は私、こちらを使うのは初めてでして

果たして問題なく作動してくれるのかが最大の心配事でした。

が!期せずして結成された40歳の老練コンビ、

結線を終えた時点でハムノイズは出てません。

これは行けるかも・・いざ、レコード盤スタート!


おお!ノイズも無く微弱なMCカートリッジ出力を増幅して

全く飽和することなくアンプへ信号を送り込んでくれてます。

インピーダンスのマッチングもいいのでDL-103との相性も抜群です。

やるじゃないかHA-T10クン!見直したぜ!


とは言っても、最大の問題点は40年を経過したDL-103の劣化状況。

喜んでばかりはいられません。

盤が回り始めて暫くは針先のトレース状態に神経を集中させました。

幸いなことに足腰は弱ってないようで完璧に音を拾っています。

心配していた歪みや嫌な音が出てないどころか

不安を吹き飛ばしてくれるように音溝をトレースしてくれてます。

なんじゃこの40歳コンビは!?すげえじゃないか!!

そしてそして、MCカートリッジに変えたことでザラ付きも無くなり

中高域の荒さや派手さを抑え込むことにも成功しました。

これなら楽器やジャンルに関わらずオールマイティに再生できそうです。

いやあ、やはりアナログは楽しい!奥が深くて達成感があります。

嬉しさのあまり、アルバム10枚ほど立て続けに掛けてしまいました。

(続く)



2022年10月30日

70年代の玩具箱(#3)

 


あらま。

浮かれていたせいか、Macを起動することをすっかり忘れてました。

Apple musicのチェックは後回しにしてCDとアナログ盤から始めることに。

近場にあったSOMETHIN' ELSEをダイヤトーンDS-251で再生してみると

わーお!音に厚みがあってデジタル臭さがありません。

中低域を持ち上げた音作りがされているようでアナログっぽい音場です。

パワー感もカタログデータ以上の張り出しを感じるほどで

まるで球のアンプで鳴らしているような錯覚に陥ります。

さすが白物家電メーカーの製品ですね、音に堅苦しさがありません。

フラットで癖のない特性を競い合うオーディオ専門メーカーであれば

こんな音作りは邪道だと決めつけて絶対にやらないでしょうけど

OTTOは家電メーカー(サンヨー)の地味なブランド製品であり

特性や回路技術を他社と張り合う必要性が無かったのでしょうから

モジュラーステレオの延長線として自由にやれたんだと思います。


でもね、アンプに限らず当時のオーディオ製品て

畑違いの会社から大傑作が生まれたりしたものなんですよ。

流行りだからウチでも作ってみるか、みたいなノリで

世に出してみると大ヒットしてバカ売れしたとか

白物家電メーカーの発想の自由さによる斬新な製品や

専門メーカーに負けじと開発された製品など、当時は多々ありました。

松下のテクニクスを筆頭に(技術力でいうと他社とは格が違いますけど)

東芝のオーレックスや日立のLo-D、少し遅れてテクノロジーのNECとか

家電各社のオーディオブランドが一斉に登場したのが70年代です。


話が少し逸れてしまったかもしれませんが

オーディオ製品に限らず、癖の強い物ほど楽しみが増すことがあります。

このアンプの分厚い音も、言ってみれば色濃く表れる「癖」であって

それが音を楽しませてくれる重要なファクターとなっているわけですから

無味無臭で上品な音の製品よりも劣るということは決してありません。

野暮でバタ臭いと言われるかもしれないこんな音、私は好きですね。

これはたぶんApple musicを再生した時にも同じように感じる筈です。

楽しみですね。


さて、フォノ・イコライザはどんな感じでしょう。

カートリッジのわずか3mmV前後の微弱信号を増幅する回路ですから

パーツの良し悪しが音質に大きく影響してきます。

ローコストに重点を置いて設計されるエントリーモデルにとって

こればかりは上位機種に敵いっこないのですが・・


聴き慣れたStuffのファーストアルバム、少々音が荒くなりました。

前述の通りフォノ・イコライザが非力なせいもありますけど

カートリッジがこのアンプと同じような音響特性を持つSHUREなので

相乗効果となって中低域が強調されすぎてしまったのでしょう。

ここはむしろフラットな特性のカートリッジに変えたいところです。

例えばDENONのMCカートリッジ、DL-103とかね。

如何に癖の強いものが好きだとは言っても

それは増幅系であるアンプや音に変換するスピーカーの話であって

元となる入口だけはフラットな特性の物をチョイスするのが

オーディオに関しては上手くバランスが取れるものなんです。


空間系の音作りが施されたApple musicではどうなりますかね。

(続く)