朝方、夢を見た。
いつものように、日常と非日常がごちゃ混ぜになった不思議な世界。
顔馴染みの何人かと一緒にテーブルを囲む。
みんな知り合いだと勝手に思っていても
実はその内の幾人かは、決まって誰だかわからない。
顔が無いのだ。
そう、「千と千尋の神隠し」に出て来るカオナシみたいな奴ら。
何故そこに居るのかもわからない。
それでもたった一人だけ
微笑みかけてくれる者が居る。
快活に話し掛けてもくれるのだが
悲しいかな、無音の夢の中では何を言ってるのか聴こえやしない。
それはまるで無声映画のワン・シーン。
モノクロで画質の悪いところまで同じだ。
唇の動き、顔の表情で台詞を頭に想い描いてはみても
たぶんそれは自分に都合の良い言葉に置き換えられてしまうんだろう。
だから心地好い。
けれど目覚めてから、微かな記憶を手繰り寄せてみると
あまりにも現実離れしていたことに気付く。
当たり前だ、それが夢だもの。
その気恥ずかしさが甘酸っぱさを連れて来る。
どうやら僕は
林檎の匂いでいっぱいだったあの日の空を
悔しいけれど忘れられずにいるようだ。
不思議の国で、また逢おう。
*