2013年11月17日

夜へ急ぐ人


昨晩に続き、ちあきなおみさんのことを。

コロムビアからビクターに移籍した頃、彼女はファドも歌っていて
1983年に「待夢」と題したアルバムを発表している。
このポルトガルのトラッドを歌う彼女もまた魅力的だ。


「霧笛(難船)」 原曲:アマリア・ロドリゲス 日本語詞:吉田旺


そしてもうひとつ、鳥肌が立つほどの歌が
77年に友川かずきが提供した「夜へ急ぐ人」
これは凄い、彼女でなければ表現できない歌だ。



この人は性を表現できる数少ない歌い手であり
それを出来得るのも彼女だけなのだ。
チャラチャラしたセクシーさではなく
人間の本質的な性を露にできるのは彼女だけだと改めて思う。

そしてこれを紅白歌合戦で歌ったというのがまた凄い。
NHKの首脳陣、さぞかし慌てたことだろうが(笑)
やはり「伝説の歌い手」である。

*

2013年11月16日

伝説の歌い手



NHK SONGSで、久しぶりに「喝采」を聴いた。
ちあきなおみさんの歌を耳にすると、やはり今でも戦慄を覚える。

歌は勿論上手いが、声がいい。
太い低域、ハスキーな中域、そして伸びやかな高域。
これらが僅か3分ほどの1曲の中で交互に表現される。
ジャズ・シンガーの発声に近い、こんな歌い手は歌謡界で他には居ない。
ビリー・ホリデイを演じた主演舞台「LADY DAY」
89年のそのミュージカルも、さぞ素晴らしきことだったろう。
この人が歌うジャズ・ナンバーを聴いてみたかった。

活動を休止して20年、
もはや伝説の歌い手となってしまったことが残念でならない。


*

2013年11月15日

爺さん度数



車で買い物に出掛け、帰宅してから徒歩でコンビニへ行った帰り道
雨も上がり、いい色合いに暮れて行く西の空を見上げた。
私の家からでは裏の竹薮が西日を遮ってしまい
その時間帯に外に居なければ絶対に見られない空なのだ。
もう少しだけ後だったなら、もっと鮮やかな朱色だったんだろうけどね。
西日の当たる部屋が私の好みなのだが、今はそれも叶わない。

月末に長男宅と末娘宅を含めた全員が集まってパーティーを催すことになっている。
8日、23日、29日と、全て11月に生まれた孫三人の合同お誕生日会である。
同じ月なので一堂に集まり、ついでに翌月のクリスマスも併せて祝う趣旨なので
忙しい親たちやプレゼントを用意する側としては何とも有り難いことなのだが
当の本人たちがもう少し大きくなった頃には損をしてると気付くのであろう。

かくして本日は東戸塚のトイザラスへ。
我が家からだと大池公園と戸塚カントリーの山を越えれば車で15分ほどの場所だ。
品物を選びレジでラッピングをお願いすると「失礼ですがお歳は・・?」と尋ねられる。
毎月15日はシルバー割引きと称して五千円以上の買い物は10%オフになるらしい。
これは初耳!
けど得した気分にはなったものの、一瞬にして爺さん度数が上がった面持ち。
映画をいつでも千円で観られるのと同じく、これはやや複雑な気分になるものだ。


私の部屋に運び込んだプレゼントの袋、大きくて邪魔臭い。
これがあと2週間も此処に在るなんて・・
フライングで届けてしまいたい衝動に駆られるが、ガマンガマン。
はたして小童どもは喜んでくれるのか、月末のその日が気掛かりでもある。

嗚呼、なんてジジ臭い一日だったんだろう。



気を取り直すように、帰宅してからアナログ三昧の続きを始めた。
おもむろに取り出したのはバーズの「名うてのバード兄弟」
これもまたCDでは味わえない奥の深い音の粒が感じられる名盤である。
A面途中に片側から強烈なハムが出始め、フォノ・アンプが逝っちまったかと思いきや
どうやら背面のアース端子の接触不良だったらしく大事には至らなかった。
ここでアンプが駄目になってしまったらダメージが大きいものね。

続いてターンテーブルに載せたのは73年リリースのオリジナル・バーズ。
紆余曲折を経て発表されたこのアサイラム盤は今聴いてもとても新鮮だ。
経験値の上がったオリジナル・メンバーが再会して作り上げた音には
バーズとしてのエッセンスが凝縮されていて心地好いのである。


73年と言えば、私が歌うことをやめてしまった年でもあるけれど
ROCKがあらゆる意味で一番輝いていた頃でもあるし、
ミュージシャンもプロデューサーもエンジニアも、果てはそれに伴う機材まで
60年代から引き継いできた物が完成形の域に達したとも言える時期である。
現在と異なるのはただ一点、アナログだったということだけ。
それ以外は何も変わっちゃいないのだ。

久しぶりにこの東芝盤の見開きジャケットからライナーを取り出してみると
師匠・小倉エージ氏の手による(自筆)バーズ系図が見事である。
これも30Cm四方あるLPジャケットのサイズ故に出来ることなのだろう。
ミニ・アートとも言えるアルバム・ジャケット。
音楽と写真や絵画、それに書籍までもが一体となった物がアナログ盤なのであり
これは決してCDには真似できないことなのだ。


裏ジャケの写真、ジーン・クラークが豪快に笑う顔と
(経験を積んだ)クリス・ヒルマンのポーズが何とも素敵である。
彼らのおかげで、爺さんは未だ若くあり続けられる。
ありがたいことだ。

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2013年11月14日

空色真冬 1995



15号線上り、新子安の駅前を過ぎた辺りだったろうか。
前方を緑色の巨大な「もっこり」が走っているのが見えた。
なにやら全体をワサワサと揺らしながら一所懸命走っている。
色合いからして、移動中の自衛隊の車両かとも思ったのだが
それにしてはフワフワ・ワサワサと揺れ過ぎる。
ピグモンの後姿みたいな、あれはいったい何なのだ!?
(後で気付いたがピグモンは決して緑色ではない)

それにしてもデカイ。
キリンビール前のガードを潜るときは天辺を擦って行った。
デカイくせに足は速い。
他の車と同じように50~60Km/hでスイスイ走る。
その先の信号でようやく追い付き近付いてみると・・

それは巨大な木だった。
葉の間から辛うじて赤旗とテールランプが片方だけ見える
中型トラックの荷台からはみ出した巨木なのであった。
首都圏の国道、白昼にこんなん走っててええの?
素朴な疑問が湧き起こる。
こんな積荷、今まで見たことがない。
iPhoneを取り出し、止まっている間にパシャリ。
世紀のスクープ映像だぜ。

この後、生麦の交差点を直進して行った緑のピグモンは
いったい何処へ向かったのであろうか。
巨大な体をワサワサと揺らしながら走る、その後姿を見送りながら
旅の無事を祈らずにはいられなかった。

異様な光景ではあったけれど
ワサワサと揺れる姿が何とも微笑ましく感じられた午後である。



今夜の(赤面)蔵出し音源は「空色真冬」1995
http://kazura-sound.up.seesaa.net/image/sorairomafuyu64k.mp3


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2013年11月13日

聖マリアンナ病院にて 1997



容赦ない寒さに縮み上がってます。
人間は弱いもんだなあ・・と、思っていたら
暖かな家でぬくぬくと暮らす飼い猫はもっと弱っちいようで
晴れた日は出窓でお日様を背に受け心地好く眠り
冷えた夜にはファンヒーターの上に座ったまま体を動かそうとしません。


おまえさあ、野良猫さんは過酷な環境に居るんだよ。
そう諭しても知らん振りされます。
たぶんこの子、もう外では暮らせないですね。
いいよ、一生ここで暮らしなさい。



2005年、三十数年ぶりに再びライブを始めた私。
その沈黙の期間中は家で子守唄を作ったり歌って聴かせたり
はたまた関わっていた子供ミュージカルの舞台音楽を制作したりと
どこかしらで音楽とはずっと繋がっていました。
レコーディング機材を買い揃え、私の部屋はちょっとしたスタジオ風情でしたが
その引き篭もり環境ではどうしてもポップな作風の物が出来上がってしまいます。
故に現在の私の歌からは想像もつかないような音源が沢山残っているのです。
自分でも赤面してしまうほどのそんな曲を、これから少しずつ紹介して行こうかと
大胆にも「蔵出し」を宣言させて頂きますので宜しくお願い致します。
なにぶん、全てのパートを一人でこなしているもんですから
お聞き苦しい箇所が多々ありますので笑って聞き流して頂ければ幸いです。

まずは1997年、
リンパ線の手術で生涯初めての入院生活を経験したことを歌にした
「聖マリアンナ病院にて」から。
なんとなくやりたいことは解るのですが、如何せん出来栄えが・・(苦笑)
わずか16年前とは言え、若気の至り!!

http://kazura-sound.up.seesaa.net/image/maria64k.mp3

夜明けと共に目を覚まして
東の空染めてく太陽に祈る
今日も一日何事もなく終わりますように
聖マリアンナ病院にて
朝焼けの眩しい窓辺に立ち
麗しき微笑を讃えしは母なるマリアンナ

ここでの暮らしにも慣れて世間話で暇潰す
訳もなく相槌打てば退屈な時間さえも苦にならない
聖マリアンナ病院にて
秋晴れの青い空を見上げ
色付いた森の中で穏やかな午後を祝うマリアンナ

無精髭伸ばし
やるせないような気だるさに
眠れぬ夜は宙を睨んで
狂おしいほどに暗い沈黙

聖マリアンナ病院にて
新しい朝を迎えるならこの身を捧げましょう
神の手に抱かれマリアンナ

どれくらいの間寝てたのか
橙色の陽は傾き
目に映る何もかもが黄昏の中で肩を寄せ合う
聖マリアンナ病院にて
夕映えの空を渡る鳥
目の前の世界中が安らぎの時を刻む
マリアンナ

「聖マリアンナ病院にて」

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2013年11月12日

冬の時代1991



列島各地が12月中旬並みの寒気に覆われています。
北国では本格的な雪が降り、横浜は乾燥した空気に包まれて
季節は急激に冬へと移行しているようです。
ほんの少し前までは汗ばむ陽気の日もありましたから
気温の変化に体がまだ対応できないせいか余計に寒く感じます。
風邪をひいてしまうのは、こんなタイミングなんでしょうね。
気を付けなきゃ。

休日だった昨日はアナログ三昧に明け暮れ、
手当たり次第に何枚のアルバムを聴いたことでしょう。
実に楽しき一日でありました。
次の休日はタチバナ・レコードへ出掛け、掘り出し物を見つけようかしら。
レコファンほどに大きな店舗だと、全部見るには疲れてしまいますから
鴨志田のあれくらいの器のお店がちょうどいいんです。
店主は面白い人だし、価格も良心的なんですよ。http://m-tachibana.com/

ところで、ピクチャー・レコードって覚えてますか?
半透明の盤面にジャケット写真や顔が刷り込まれたLPレコードなんですが
一時期に流行してずいぶん沢山の種類が売り出されていました。
私も何枚か持ってましたけど今は1枚も手元にありません。
あれは確か海賊盤の部類で、あろう事かアビーロードまで出ていた記憶がありますけど
材質が悪かったせいか音も悪く反りやすいので部屋の飾りにしかなりませんでした。
(紙ジャケットじゃなく透明なビニールに裸で入れて売られてました)

そんなレコードとは呼べないレコード盤、ふと思い出すと懐かしいものですね。
残してあったならヤフオクで高く売れたかも・・(笑)



そういえば、こんな古い音源が見つかりました。
1991年に湾岸戦争が勃発したときに書いたもので
その年の1月か2月に自宅で録音したラフなオリジナルです。
今でもライブでは時折歌う曲なんですが、22年前の私の声が若い!(驚)

「冬の時代」 http://kazura-sound.up.seesaa.net/image/fuyunojidai64k.mp3

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2013年11月11日

表と裏



東京に木枯らし1号が吹き、列島は一気に冬本番となりました。
北国では本格的な雪が降り、ここ横浜も夕刻からずいぶんと冷え込んできています。
明日の横浜の最低気温は6℃とか。
すでに氷点下となっている地域の方には笑われるかも知れませんけど
北海道で生まれ育ったくせに、私は人一倍の寒がりなもんで
気温が一桁になった途端に縮み上がってしまうのです(笑)

そんな寒さを嫌って外に出るのを躊躇うからでしょうか、
この季節になると無性にアナログ盤が聴きたくなってしまいます。
裸電球の橙色が温かく感じられるように、CDに比べてレンジの狭いアナログ盤の音が
妙に心地好く体の中に溶け込んで来るのは決まってこの時期なんです。
室温が低いと、わずか1.5gほどの針圧で盤面をトレースするプレーヤーにとっては
空気の乾燥と併せて、とても過酷な条件になるんですけどね。

昨年の秋ハードオフにて格安で購入したDENONのターンテーブル、
およそ半年ぶりに電源を入れましたが、今年も快調に回ってくれたのが嬉しいです。
サーボ基板にトラブルの多い機種なので、突然制御が効かなくなる物もありますから
幸い今回は「当たり」だったのかも知れませんね。


左からオーディオテクニカのMC(品番不明)MMのシュアーM-44G、同じくM-97HE、
午後からふと思い立って、カートリッジの針先の手入れを始めました。
この他にもDENONやオルトフォンのMCも手元に有るんですが
どれも皆20~30歳と高齢のため、さすがに高域が歪んだりする始末で
現在使い物になるのはこの3個だけとなってしまいました。

本当はMCの色付けの無い音が好みだったんですけど、
アンプのフォノ・イコライザーの昇圧が片チャンネルだけ不調なものですから
今回からM-97HEという、往年の名器V-15TYPEⅣ直系のMM型に替えてみました。
これ、形が好きになれなくてずっと使ってなかった代物なんですが
(個人的な好みとしてカートリッジは無骨なまでに四角い物が良い)
音質といいトレース能力といい、予想を裏切る好結果となりました。


アナログ時代の晩年に登場したカートリッジだけあり、
当時としては先進的なデザインでしたが私はこの顔付きが好きになれませんでした。
なので25年間、まともに使ったことが無かったのですが
びっくりするくらいどんな厳しい音溝にも喰らい付いて行きますし、
聴感上の歪感が極めて低く、どのアルバムもとても楽しく聴かせてくれます。
どれもが退役時期を遥かに過ぎた物ばかりの中で、これは嬉しい誤算です。
シュアーさん、ありがとう!

すっかり気を良くした私、アルバムを何枚聴いたことでしょう。
そして今はマナサスを掛けながらキーを叩いております。
2枚組なので計4回席を立たなければなりませんけど、それが苦にならない。
(操作に危険な)焼酎を飲みながらも、アナログ万歳!の心境です。


リスナーはA面とB面をひっくり返すことで一息つけて、
ミュージシャン(制作者側)は表と裏で表情や表現を変えられる。
アルバム作りにはそれが欠かせないと、今でもずっと思ってるんですよね。
表と裏、何事もこれ大事!

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