2015年3月5日

繊細さと力強さ



繊細な音溝をトレースするための
これまた繊細で精巧な作りのトーンアームに
こんなにも無骨なヘッドシェルを装着してしまった。

けど、まんざら悪くない気分。
ずっしりと重くてゴツイ体裁のオルトフォンSPUが好きだったから
頭でっかちなプロポーションは嫌いじゃない。

20数年間、小物入れに仕舞い込まれていたFRの重量級ヘッドシェル。
さすがにDENONのトーンアームには気の毒な気もするし、
バランスウエイトが極限まで後ろに下がってしまってる。
(トレースに悪影響を及ぼすので、良い子のみんなは真似しないでね)


なぜ重いのかというと、裏側はこんな構造になっていて
肉厚のあるシェルに、更に鉛の板が挟まっているからだ。
カートリッジのボディはこの鉛板にがっちりと固定されるので
音を濁らせる元となる共振が起りにくくなる。
振動する物体は安直にゴムを用いて和らげても駄目なのだ。

ちょっとだけよ、の薀蓄(笑)


そして鉛板に固定されたカートリッジを前後にスライドさせて
オーバーハングを調整するためのビスの頭がこれまた巨大。
こりゃあもう笑っちゃうしかないけれど、
侮るなかれ、これはその昔デザイン大賞を受賞しているのだよ。
ほら、見方によっては美しく感じてしまうでしょ?
繊細さと力強さ、アナログオーディオは車に似ているかもね。

明日は休みなので、ちょっと大きめの音で聴いてみよっと。

*

2015年3月3日

ドンシャリ



近頃は若者の難聴が増加しているらしい。
ヘッドホンで大音量の音楽を聴くからだとか。

若者たちよ、耳は大事よ。
いい音楽を、適度な音量で楽しみたまえ。

けれど時折、どうしてもデカイ音で聴きたくなってしまうもの。
あたしとて、体が包み込まれるほどの音圧が快感になることもある。

でも、ヘッドホンはイヤ。
やっぱり音ってやつは「空気」を感じられなきゃ。

鼓膜から脳味噌に直結するのは短絡的すぎて
考えるいとまが欲しくなっちまう。

あ、そうか。
あれこれ考えたくないからヘッドホンを使うのか。

こりゃ失敬。
爺さんは夢想するばっかりで、思考なんて無に等しいことに気が付いたわ。

そんな爺さんの耳も、歳相応の衰えは否めない。
特に高域の聴感低下が甚だしい。

今夜、アルバムを掛けてたら高域の抜けが悪い気がして
カートリッジをDENONのMCからSHUREのMMに交換しちまったさ。

ドンシャリでアクが強くて
これぞアメリカ!てな具合の派手な音に変身。

爺さんだって、刺激は求めるものなのよ。
さ、呑もう。

*

2015年2月23日

南南西の風に想ふ



2月のこの時期に、いきなり5月中旬の陽気とは
目覚めたときに戸惑ってしまったほど季節感の無い休日でした。
貧乏性でケチな僕の性分でありますから
その(勿体ないほど)心地好い陽射しを見過ごすわけにはいかず
起きて早々に洗濯を始め、窓を全開にして掃除を済ませました。

なんでしょ?この至福に満ちた解放感。
極寒の北国に住んでいるわけでもないのに
沸々と湧き上がるのは、冬を越えた後に春を迎える安堵感にも似た
どこか動物的な感情のようです。

カーテン越しに、風に揺らめく洗濯物のシルエットを見ていると
これが平穏な日常なのだということに気付きます。
厚木基地へと向う米軍機が、轟音を響かせながら空を横切ったとしても
住宅街は静かに時を刻み、ひっそりと佇んでいるのですから。


買い物ついでにハードオフへ立ち寄り、餌箱を漁ってみました。
去年の夏頃まではアナログ盤の宝庫とも言えた地元のその店も
近頃じゃまともな物が全く並ばなくなってしまいました。
たぶんアナログ盤を専門に扱う店舗が新潟に(だったっけ?)出来たせいでしょうね。

それでも端から端まで全て見ることだけはやめられません。
今日も何にも無いなあ・・と、諦めながらも見るのです。
その(無駄な)労力を費やすことを正当化したいがために
百円のアルバムを1枚だけでも買って帰るのですが、
今日は幸いなことにロギンズ&メッシーナの2ndが米国盤で見つかりました。
もちろん百円。
春先の陽気には、似合う音色のアルバムだと思います。

ああ、それにしても
60年代後半から70年代初頭に至る米コロムビアの音って、なんて素敵なんでしょう。
名盤を数多く世に送り出したことが頷けます。
CBSソニーの国内プレス盤では味わえない「何か」が、
ラフな作りのレコード盤にしっかりと刻まれている気がするんです。

これだからアナログ盤はやめられないんですよね。


この女性も平和な時間に感謝しながら
寝る、喰う、寝る、寝る、の業務をしっかりとこなしておりました。
伸ばした足の指先がパアになっているのは
今が幸福であることの証なのです。

けれど穏やかすぎる一日が、なんだか怖くなってしまうのは
63年ほど生きてきた中で体験した、様々な出来事が脳裏に焼き付いているから
・・なのでしょうか。

南南西の風に想ふ。

*

2015年2月19日

IN THE NIGHT




ディランのSHADOWS IN THE NIGHTを聴いていると
どうしても、次にこちらを掛けてしまいます。
ニルソンのA LITTLE TOUCH OF SCHMILSSON IN THE NIGHT。

フランク・シナトラをカヴァーしたディランの新作、
そのシナトラの多くの楽曲をアレンジしたゴードン·ジェンキンスが
ニルソンのこのアルバムでもオーケストラをアレンジしているというのが
何か不思議な縁を感じてしまうのです。

ストリングスを艶やかに再生してくれるSX-3Ⅱのおかげもあって
重厚で時に軽やかに奏でられる弦の音に酔いしれながら
心地好い夜の時間を過ごすことが幸せに感じられます。

どちらもタイトルはIN THE NIGHT、
ウヰスキーと夜に似合わぬわけがありませんものね。
堅苦しい話は抜きにして、リスナーに徹するしかないようです。

53歳で亡くなったニルソン、
今も健在であれば、いったいどんなアルバムを披露してくれたことでしょう。
つい、そんなことを想ってしまう夜でした。



今日は年に一度の眼科検診。
手術から6年以上が経過して、これ以上良くなることはなくても
今より悪くなることはないだろうとのこと。
紹介状を書いてもらい、次回からは地元の眼科で診察を受けることになり
通い慣れた聖マリアンナ病院へと続く路を歩くのも今日で最後となりました。

帰り道、ふと空を見上げると
真っ白でふわふわな雲が、凛とした青い空を流れて行きました。
春が近付いているようです。

*

2015年2月15日

Khaki



今日は、とある予定があったのだが
諸事情からやむなく中止になってしまった。

ぽっかあーんと空いてしまった時間。
天気もいいことだし、掃除を済ませてから
食料の買出しついでに午後から車を走らせた。

仕事場用のパンツが傷んでしまっていたので
冬物の在庫処分品が安く売られてないかしらと
都岡に在るGUを覗いてみる。(なんたって安いからね)

生憎と、期待していた冬物パンツの売れ残りは無かった。
GUとは言えども、さすがにこの時期は春物に変わるようだ。

手ぶらで帰ろうかと思っていたら
ハーフコートが叩き売りでぶら下がっていた。
春に向けてどうかとも思ったけれど、
1990円のプライスに惹かれて買っちまったさ。
またしてもカーキのコート(笑)
好きなんだよねえ、この手の色合いは。

車や飛行機や船、機械モノには必ずあるカラーなんだけど
なぜか楽器類には無いんだよね。
カーキのギターとか、有ったらたぶん買ってるだろな。
ドブロなんか似合いそうな色じゃない?

まあでも、そもそも「土埃」という意味の言葉。
カーキには黄土色から緑色まで、国や時代によって様々な色合いがある。
僕が好きなのは、いわゆる「米軍色」のオリーブド・ラブ。
ミリタリー・カラーではあっても、単純に好きな色だってことだけ。

肉食だけど植物系の「かずら」ですもん。
やっぱ緑でしょ。

とは言いながら・・
たまには原色系を身に纏ってみたいものだ。

・・似合わないか。


昼間、パソコンで書類を作って
それを郵送すべく封筒に収めたのだが、
旧い人間であるせいか
最後にこの「〆」を記さずにいられないのだ。
近頃では見掛けなくなった気がするけどさ
封印て、大事よね。

さ、もう一杯呑も。

*

2015年2月12日

スタンダードというスタイル


数ヶ月に一度のペースでしか歌わなくなった今、
最も恐れていることは本番で歌詞が飛んでしまうこと。
自分の書いた歌なのにね。

スタイルに妙な拘りを持つ僕にとっては
譜面台に歌本を置くような真似は絶対にしたくないのであって
その頑固さが災いして肝心な部分がすっ飛んでしまったことが幾度となくある。

潔く譜面台を立てりゃいいのに!
そんな声がどこからか聞こえて来そうだけれど
やだね、僕は嫌だ。格好悪いんだもん。

昨夜、実は歌いたい曲があった。
出番を待つ間、飲みながら詩の一節を思い浮かべていると
どうしても思い出せない箇所がある。
あれ?なんだっけ?あれ・・?
そうこうしているうちにどんどん深みに嵌って行き
まるで思い出せなくなってしまった。
言わば、物忘れのツボ。

それが、トイレに行って用足しをしてるとき
不意に思い出したのだから笑ってしまう。
しかし、こりゃいかん。
それがトラウマになると、歌い出した途端にまた飛んでしまうもんだ。
結局、臆病風を吹かせてその曲は避けたのだが
歌いたかったと後になってから思う、とんだ小心者である。

ありがたいもので
こんな僕を招待してくださる方が時折いらっしゃる。
昨晩のPasta de acoustic vol.1というイベントも
一度しかお会いしたことのない方からのお招きだった。
本当にありがたいお話だ。

当然、心地好い気分で歌わせて頂いた。
リハのサウンドチェックの時点から
肩の力が抜け、僕は楽しくて仕方なかったくらいである。

たぶん気付いた方も居たことだろう。
昨夜の僕の声は、いつになく柔らかだったことを。
風景としての歌に、密かに表情を加えてみたんだ。
そしたら、今までとは全く別の世界が見えて来た。
それがもう、楽しくて楽しくて。

スタンダード、
僕が生み出した歌は、既に自身にとってのスタンダードになっているわけで
それを色付けすることで、とても新鮮な感覚を伴って自分に返って来る。
これが昨夜の収穫、楽しさ(愉しさ)の源だったのだ。


共演者であり、古くからの友人でもある楼茶が撮ってくれたスナップ。
これを見ていても、楽しんでいた自分の気持ちが伝わって来る。
いい写真だね。

歌の世界では異端児的な(児じゃないか)僕を誘って頂いた堤さん、野田シェフ、
帰りに車で送ってくれたディープなブルーズを(でかい声で)歌うディクソン清水さん、
カウンターでずっと話し込んでしまうほど意気投合した大野さん、
いつ以来なのか思い出せないくらい久しぶりに会ったタケちゃん、
旨い酒と心地好い時間を提供してくれたボーマスと若女将のレイナ、
そして僕の歌を愛してくれている(らしい)楼茶。
みんなに感謝!な夜は、家に帰ってから呑み直すという結果を生んだ。

そして、撃沈。
テーブルに突っ伏したまま夜明けを迎えたのである。

大人の事情で、仕事をサボろうかとも思ったけれど
酒の臭いをぷんぷんさせながら仕事場へと車を走らせ
きっちりと業務をこなして来た自分を、僕は褒めてあげたい。

今年で63歳となる、かずら元年。
この先の道が、ちょっぴり垣間見えたような気がしている。
まだまだ、まだまだ、歌うよ。
幾つになっても、修行の毎日だなんて
こんな素敵な人生はないからね!



思いの丈 伝わらなくて
唇を噛むなら
人一倍頑張った自分を
褒めてあげよう ねえ君

くよくよしないで
いつもの白い歯を見せてくれよ
ヘイ!夕焼けの134号線を南へ下れ
ヘイ!夕焼けの134号線を南へ下れ

「134号線の夕陽」より

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2015年2月9日

SHADOWS IN THE NIGHT



それは必要以上に大きな箱に入って届いた。
開梱すると、当然のように一枚のアナログディスクが出てくる。
180gの重量盤なので、シングルジャケットではあっても分厚い。

あれ?確かCDも付いてる筈なんだけどなあ・・

ちょっぴり心配しながらジャケットのシールを切ると
薄い紙ジャケに収まったCDが無造作に中に放り込まれていた。
さすがアメリカ、けど憎めないしこれでいいのだと納得できるから不思議。
日本盤のような仰々しさが無いところがいい。

そしてブルーノート盤を模したデザインのレーベル、いいね。
とりあえずCDをセット、友人が言ってたように
これは泣けるアルバムだわ。
しばらくの間、深夜のウヰスキーのお供になりそう。

それはそうと、
ライブが明後日に迫っている。
呑気にディランの新譜を聴いてる場合じゃないのだ。

試験を翌々日に控え、慌てて勉強を始める子供みたいに
そそくさと弦を張り替えた。


お馴染みの格安フォスファーブロンズ弦である。
このテンションの低さに惹かれ、今じゃとってもお気に入り。
12-53のゲージでありながら、ミディアムと表記されてるところも嬉しい部分。

いや、そんなことはどうでもいい。
歌えんのか?おれ。

・・どうなることやら(笑)



2月11日(水)東白楽B.C.B.G.
19:00 open 19:30start
パスタバイキング+ワンドリンク付き¥2000

出演者
①Buddha Bless You
②ディクソン清水
③かずら元年
④楼茶

B.C.B.G.
神奈川県横浜市神奈川区西神奈川3-17-10 小柴ビル1F
TEL 045-633-4665
http://www.geocities.jp/noborderyokohama
東横線東白楽駅から徒歩2分

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