2015年2月23日

南南西の風に想ふ



2月のこの時期に、いきなり5月中旬の陽気とは
目覚めたときに戸惑ってしまったほど季節感の無い休日でした。
貧乏性でケチな僕の性分でありますから
その(勿体ないほど)心地好い陽射しを見過ごすわけにはいかず
起きて早々に洗濯を始め、窓を全開にして掃除を済ませました。

なんでしょ?この至福に満ちた解放感。
極寒の北国に住んでいるわけでもないのに
沸々と湧き上がるのは、冬を越えた後に春を迎える安堵感にも似た
どこか動物的な感情のようです。

カーテン越しに、風に揺らめく洗濯物のシルエットを見ていると
これが平穏な日常なのだということに気付きます。
厚木基地へと向う米軍機が、轟音を響かせながら空を横切ったとしても
住宅街は静かに時を刻み、ひっそりと佇んでいるのですから。


買い物ついでにハードオフへ立ち寄り、餌箱を漁ってみました。
去年の夏頃まではアナログ盤の宝庫とも言えた地元のその店も
近頃じゃまともな物が全く並ばなくなってしまいました。
たぶんアナログ盤を専門に扱う店舗が新潟に(だったっけ?)出来たせいでしょうね。

それでも端から端まで全て見ることだけはやめられません。
今日も何にも無いなあ・・と、諦めながらも見るのです。
その(無駄な)労力を費やすことを正当化したいがために
百円のアルバムを1枚だけでも買って帰るのですが、
今日は幸いなことにロギンズ&メッシーナの2ndが米国盤で見つかりました。
もちろん百円。
春先の陽気には、似合う音色のアルバムだと思います。

ああ、それにしても
60年代後半から70年代初頭に至る米コロムビアの音って、なんて素敵なんでしょう。
名盤を数多く世に送り出したことが頷けます。
CBSソニーの国内プレス盤では味わえない「何か」が、
ラフな作りのレコード盤にしっかりと刻まれている気がするんです。

これだからアナログ盤はやめられないんですよね。


この女性も平和な時間に感謝しながら
寝る、喰う、寝る、寝る、の業務をしっかりとこなしておりました。
伸ばした足の指先がパアになっているのは
今が幸福であることの証なのです。

けれど穏やかすぎる一日が、なんだか怖くなってしまうのは
63年ほど生きてきた中で体験した、様々な出来事が脳裏に焼き付いているから
・・なのでしょうか。

南南西の風に想ふ。

*

2015年2月19日

IN THE NIGHT




ディランのSHADOWS IN THE NIGHTを聴いていると
どうしても、次にこちらを掛けてしまいます。
ニルソンのA LITTLE TOUCH OF SCHMILSSON IN THE NIGHT。

フランク・シナトラをカヴァーしたディランの新作、
そのシナトラの多くの楽曲をアレンジしたゴードン·ジェンキンスが
ニルソンのこのアルバムでもオーケストラをアレンジしているというのが
何か不思議な縁を感じてしまうのです。

ストリングスを艶やかに再生してくれるSX-3Ⅱのおかげもあって
重厚で時に軽やかに奏でられる弦の音に酔いしれながら
心地好い夜の時間を過ごすことが幸せに感じられます。

どちらもタイトルはIN THE NIGHT、
ウヰスキーと夜に似合わぬわけがありませんものね。
堅苦しい話は抜きにして、リスナーに徹するしかないようです。

53歳で亡くなったニルソン、
今も健在であれば、いったいどんなアルバムを披露してくれたことでしょう。
つい、そんなことを想ってしまう夜でした。



今日は年に一度の眼科検診。
手術から6年以上が経過して、これ以上良くなることはなくても
今より悪くなることはないだろうとのこと。
紹介状を書いてもらい、次回からは地元の眼科で診察を受けることになり
通い慣れた聖マリアンナ病院へと続く路を歩くのも今日で最後となりました。

帰り道、ふと空を見上げると
真っ白でふわふわな雲が、凛とした青い空を流れて行きました。
春が近付いているようです。

*

2015年2月15日

Khaki



今日は、とある予定があったのだが
諸事情からやむなく中止になってしまった。

ぽっかあーんと空いてしまった時間。
天気もいいことだし、掃除を済ませてから
食料の買出しついでに午後から車を走らせた。

仕事場用のパンツが傷んでしまっていたので
冬物の在庫処分品が安く売られてないかしらと
都岡に在るGUを覗いてみる。(なんたって安いからね)

生憎と、期待していた冬物パンツの売れ残りは無かった。
GUとは言えども、さすがにこの時期は春物に変わるようだ。

手ぶらで帰ろうかと思っていたら
ハーフコートが叩き売りでぶら下がっていた。
春に向けてどうかとも思ったけれど、
1990円のプライスに惹かれて買っちまったさ。
またしてもカーキのコート(笑)
好きなんだよねえ、この手の色合いは。

車や飛行機や船、機械モノには必ずあるカラーなんだけど
なぜか楽器類には無いんだよね。
カーキのギターとか、有ったらたぶん買ってるだろな。
ドブロなんか似合いそうな色じゃない?

まあでも、そもそも「土埃」という意味の言葉。
カーキには黄土色から緑色まで、国や時代によって様々な色合いがある。
僕が好きなのは、いわゆる「米軍色」のオリーブド・ラブ。
ミリタリー・カラーではあっても、単純に好きな色だってことだけ。

肉食だけど植物系の「かずら」ですもん。
やっぱ緑でしょ。

とは言いながら・・
たまには原色系を身に纏ってみたいものだ。

・・似合わないか。


昼間、パソコンで書類を作って
それを郵送すべく封筒に収めたのだが、
旧い人間であるせいか
最後にこの「〆」を記さずにいられないのだ。
近頃では見掛けなくなった気がするけどさ
封印て、大事よね。

さ、もう一杯呑も。

*

2015年2月12日

スタンダードというスタイル


数ヶ月に一度のペースでしか歌わなくなった今、
最も恐れていることは本番で歌詞が飛んでしまうこと。
自分の書いた歌なのにね。

スタイルに妙な拘りを持つ僕にとっては
譜面台に歌本を置くような真似は絶対にしたくないのであって
その頑固さが災いして肝心な部分がすっ飛んでしまったことが幾度となくある。

潔く譜面台を立てりゃいいのに!
そんな声がどこからか聞こえて来そうだけれど
やだね、僕は嫌だ。格好悪いんだもん。

昨夜、実は歌いたい曲があった。
出番を待つ間、飲みながら詩の一節を思い浮かべていると
どうしても思い出せない箇所がある。
あれ?なんだっけ?あれ・・?
そうこうしているうちにどんどん深みに嵌って行き
まるで思い出せなくなってしまった。
言わば、物忘れのツボ。

それが、トイレに行って用足しをしてるとき
不意に思い出したのだから笑ってしまう。
しかし、こりゃいかん。
それがトラウマになると、歌い出した途端にまた飛んでしまうもんだ。
結局、臆病風を吹かせてその曲は避けたのだが
歌いたかったと後になってから思う、とんだ小心者である。

ありがたいもので
こんな僕を招待してくださる方が時折いらっしゃる。
昨晩のPasta de acoustic vol.1というイベントも
一度しかお会いしたことのない方からのお招きだった。
本当にありがたいお話だ。

当然、心地好い気分で歌わせて頂いた。
リハのサウンドチェックの時点から
肩の力が抜け、僕は楽しくて仕方なかったくらいである。

たぶん気付いた方も居たことだろう。
昨夜の僕の声は、いつになく柔らかだったことを。
風景としての歌に、密かに表情を加えてみたんだ。
そしたら、今までとは全く別の世界が見えて来た。
それがもう、楽しくて楽しくて。

スタンダード、
僕が生み出した歌は、既に自身にとってのスタンダードになっているわけで
それを色付けすることで、とても新鮮な感覚を伴って自分に返って来る。
これが昨夜の収穫、楽しさ(愉しさ)の源だったのだ。


共演者であり、古くからの友人でもある楼茶が撮ってくれたスナップ。
これを見ていても、楽しんでいた自分の気持ちが伝わって来る。
いい写真だね。

歌の世界では異端児的な(児じゃないか)僕を誘って頂いた堤さん、野田シェフ、
帰りに車で送ってくれたディープなブルーズを(でかい声で)歌うディクソン清水さん、
カウンターでずっと話し込んでしまうほど意気投合した大野さん、
いつ以来なのか思い出せないくらい久しぶりに会ったタケちゃん、
旨い酒と心地好い時間を提供してくれたボーマスと若女将のレイナ、
そして僕の歌を愛してくれている(らしい)楼茶。
みんなに感謝!な夜は、家に帰ってから呑み直すという結果を生んだ。

そして、撃沈。
テーブルに突っ伏したまま夜明けを迎えたのである。

大人の事情で、仕事をサボろうかとも思ったけれど
酒の臭いをぷんぷんさせながら仕事場へと車を走らせ
きっちりと業務をこなして来た自分を、僕は褒めてあげたい。

今年で63歳となる、かずら元年。
この先の道が、ちょっぴり垣間見えたような気がしている。
まだまだ、まだまだ、歌うよ。
幾つになっても、修行の毎日だなんて
こんな素敵な人生はないからね!



思いの丈 伝わらなくて
唇を噛むなら
人一倍頑張った自分を
褒めてあげよう ねえ君

くよくよしないで
いつもの白い歯を見せてくれよ
ヘイ!夕焼けの134号線を南へ下れ
ヘイ!夕焼けの134号線を南へ下れ

「134号線の夕陽」より

*

2015年2月9日

SHADOWS IN THE NIGHT



それは必要以上に大きな箱に入って届いた。
開梱すると、当然のように一枚のアナログディスクが出てくる。
180gの重量盤なので、シングルジャケットではあっても分厚い。

あれ?確かCDも付いてる筈なんだけどなあ・・

ちょっぴり心配しながらジャケットのシールを切ると
薄い紙ジャケに収まったCDが無造作に中に放り込まれていた。
さすがアメリカ、けど憎めないしこれでいいのだと納得できるから不思議。
日本盤のような仰々しさが無いところがいい。

そしてブルーノート盤を模したデザインのレーベル、いいね。
とりあえずCDをセット、友人が言ってたように
これは泣けるアルバムだわ。
しばらくの間、深夜のウヰスキーのお供になりそう。

それはそうと、
ライブが明後日に迫っている。
呑気にディランの新譜を聴いてる場合じゃないのだ。

試験を翌々日に控え、慌てて勉強を始める子供みたいに
そそくさと弦を張り替えた。


お馴染みの格安フォスファーブロンズ弦である。
このテンションの低さに惹かれ、今じゃとってもお気に入り。
12-53のゲージでありながら、ミディアムと表記されてるところも嬉しい部分。

いや、そんなことはどうでもいい。
歌えんのか?おれ。

・・どうなることやら(笑)



2月11日(水)東白楽B.C.B.G.
19:00 open 19:30start
パスタバイキング+ワンドリンク付き¥2000

出演者
①Buddha Bless You
②ディクソン清水
③かずら元年
④楼茶

B.C.B.G.
神奈川県横浜市神奈川区西神奈川3-17-10 小柴ビル1F
TEL 045-633-4665
http://www.geocities.jp/noborderyokohama
東横線東白楽駅から徒歩2分

*

2015年2月5日

ロー・ファイ万歳!



そりゃあ欲しい気持ちだってありますよ。
僕の手元には発売当時のアナログ盤が残ってないんですから。
でもねえ、いくらダイレクトカッティングされたアナログ盤2枚と
リマスタリングを施されたCDが2枚入ってるからと言われても
12960円てえ値段を見ると、つい後ずさりしてしまうってもんですよ。
おまけに、おっかなくって針を乗せられない(笑)

・・昨年末に発売された「はっぴいえんどマスターピース」
の、ボヤキでした。あしからず。

昔、金に困ってURCのオリジナル盤を売り払ってしまった僕は
今じゃこんな情けないCDしか持ってないのです。
「ゆでめん」と「風街」がカップリングされた
SMSがURCの版権を持っていた一時期の代物であります。
デザインもへったくれも無い、笑っちゃうようなジャケットではありますが
(負け惜しみを含め)今の僕にはこれで十分だと思っています。

来週のライブで「ゆでめん」から1曲やることになったもんで
部分的な確認のため久しぶりに再生してみたんですけど・・

ひゃあーっ!なによ、この粘りっけたっぷりな音!!
遠い昔に聴いた、そのまんまの音が流れ出て来て驚いてしまいましたわ。
(わかりやすく言うと、大昔の家具調ステレオみたいな感じね)
70年代の初頭にカミさんの実家のステレオで聴いていた頃を思い出しました。
ビクターのSX-3Ⅱでこのアルバムを掛けるのは初めてだったことに気付きましたけど
いやあ、こんなところにもこのスピーカー効果が表れるとはねえ。
デジタル・リマスタリングもハイレゾもくそ喰らえです。
ロー・ファイ万歳!!そう叫びたいくらい。


そんな僕が今夜ポチッたのはこれ。
重量盤アナログ・ディスクとCDがセットになって3558円。
新譜でもあることだし、この価格はやむを得ないところ。
ディランの「今」を聴くのです。

*

2015年1月21日

似非



似非オーディオ評論家のかずらです。
尻軽男の浮気話、
そう解釈されても構いません。
けれど、惚れたからには
やっぱり書き記しておきたいのです。

初代SX-3を返品して新たに購入したSX-3Ⅱ、
先代のコンディションがあまり良くなかったとは言え
比較にならないほどの高音質に驚いてます。
70年代万歳!その時代のアルバムの音が瑞々しく鳴り響くんですから。

先代も良かったんですが、
どこか重たく粘っこさが強すぎる感がありました。
ソフトドームのツイーターが改良され、
クロスオーバー周波数が1.8KHzに変更されただけなのに
こんなにも音の表情が変わってしまうことにびっくりです。

たっぷりとした低域はブーミーにならず適度に締まり
評価の高いソフトドーム・ユニットの高域は癖が無く
アッテネーターを全開にしてもやかましくなりません。
初代SX-3はややドンシャリ気味でしたから
二代目となったSX-3Ⅱの音作りは成功してると思います。

たぶん・・ですが
発売当時、クラシック愛好家からは弦の音に艶があると脚光を浴びたものの
ロックやジャズを聴いていた連中からは敬遠されていたことから
分解能と張り出し感を加えてオールマイティな所を目指したんじゃないでしょうか。
事実、僕も今回に至るまでこのスピーカーを信用してなかったくらいですから。
後にも先にも、これを使っていた友人知人の類では
ナイアガラ・ムーンの裏ジャケに写る大瀧詠一氏、ただ一人でした。
(さすが御大!目の付け所が違う!!)

でもね、決してカラッとした明るい音じゃないんですよ。
どこか憂いを含んだような、いわゆる色艶を感じるあたりが
JBLなどとは違って「日本の音」なんだろうなと受け止めてます。
今の自分は、そこが心地好い理由なのでしょう。
以前このBlogで、SX-3は日本語が綺麗に聴こえると記したことがありましたけど
それはきっとこのスピーカー独特の艶に起因してるんでしょうね。


とは言っても、英語だってもちろんいい。
たとえばこのボビー・チャールズ、篭り気味の声もハモンド・オルガンも
ベアズヴィル・スタジオの空気感まで上手く表現してくれます。
このアルバムを持ってる人ならわかると思いますけど
スピーカーによってはボーカルのsやthの発音が強調され過ぎて
ほんのちょっとだけ歪んでしまうんですよね。
ところがSX-3にはそれが無い。
その辺りの音作りが実に巧みで感心してしまいます。
往年の日本ビクターの技術力は凄い!

さて、
お誘いを受けたライブ・イベントが刻々と迫って参りました。
一日のほとんどをリスナーとして過ごした休日ではありますが
少しだけ楽器に触れてみました。


やはりこれが、一番信頼のおける相方なのだと
改めて実感した次第なり。
さてさて、何を演りましょうかねぇ・・

明日は孫(2号機)の学芸会観覧のため
鎌倉まで行って参ります。

*